ヒズミ回想

とあるバンドマンの、変哲も平坦もない日常。

3月10日 場所のハナシ

朝は、4:50に起床。

誤字ではない、四時五十分である。

早朝にもほどがある。

 


本日は、福岡を出て、7時過ぎには北九州におらねばならぬ。なので、街に出て6時のバスに乗らねばならぬ。なので、5:20には家を出ねばならぬ、なので、4:50起きである。

 


正直、状態はヤバめである。

睡眠時間も多くはないが、質は良かったのか、緊張てしいたのか、眠りの質は悪くはなかったようだ。目は覚めている。

 


お湯とバナナを2本、実家から貰ったパンを胃に埋め込み、3日分の荷物をゆるく確認して、いざ、家を出る。

 


午前5時20分。

外は真っ暗である。雨も少し降っていた。

夜か朝かが人に寄る時間帯。朝の私は、あくびをしながら、歩いていく。

傘の下にはもう、前ほどの寒さはない、不思議な空気を吸い込みながら、駅へ向かう。

 


動いていない街を歩き、バスターミナルに着く。中の売店も空いていない、これまた、不思議である。

バスを、待つ。

 


バスに、乗る。

イヤホンアラームを設定し、アイマスクもつけ、睡眠時間の負債を返済すべく、眠る。

 


こういう時の眠りは、マジで一瞬である。

1時間くらいの道のりだが、体感、10分の睡眠であった。目覚めもそんなに悪くない、よし。

 


7時を過ぎても、まだ暗い。雨のせいもあるだろう。メンバーの生死を確認し、歩いてGtソウイチロウ宅へ向かう。

 


着。

ソウイチロウはシャワー中であった。部屋に入らせてもらい、お湯を沸かさせてもらい、コーヒーも淹れさせてもらい、飲ませてもらい、一息もつかせてもらう。

 


準備が整い次第、出かける。

エンジンをかけると同時に、ワイパーで雨を払う。サポートBa.お嬢を拾いサポートDr.みょーちんを拾い、いざ山口県、岩国ロックカントリーへ。小倉東インターより、高速を刻む。

 


いつも通り、毒にも薬にもなる話を処方し合いながら、車は走る。

あんまり喋らないバンドっているらしいけど、道中どうしてんだろうか。楽しい方がいいと思うが。

 


11時、岩国ロックカントリー、着。

幾度となくお世話になっている、馴染みの土地である。ありがたい話だ。

 


リハーサルを済ませて、飯へ向かう。

スエヒロという中華そばの店に行こうと思ったが、並んでいたために断念。悔しい。近所のカレー屋で、まぁおいしいカレーを食べる。

 


しかしみんな、朝が早かったためか、今ひとつ元気はない。お嬢は体調不良により、車で休む次第になった。ううむ、大丈夫か。

 


イベント開演。

本日はバンドとDJの複合イベントであり、転換中にかけるDJではなく、きちんと枠が設けてあるDJであった。

 


しかしわたしイイジ、正味、DJの楽しみ方がよくわからない。別に否定をするつもりはない、どちらかというと、私の心構えの方の問題であろう。肉を調味料なしで食べていて、なんの調味料をかければいいかわからない状態、言語化すればそんな感じ。

 


公演は続く。

しかし長丁場である。開始が13:00で、終わるのが20:00近いイベントである。

こういう日は、体力管理が重要になる。6時間爆音を浴びた後、いいコンディションでライブをすることなど不可能に近い。対バンを少し見ては楽屋を繰り返し、過ごす。

対バン、なるべく見たいし、見るのは義務だとも思っているが「自分が最高のパフォーマンスをする」ことが最上の命題である。差し支えないよう、動かねばならぬ。

 


時折、車にお嬢の様子も見に行く。

寝ていたが、それなりに大丈夫そうである。要望を聞き、カフェラテを買ってきてやった。恩に着るがいい。

 


イベントは進む。

控え室でギターを弾いていると、楽屋では結構な大声で、結構にしょうもない話をする人間がいた。聞けば聞くほど痛々しく、テンションも下がる。

そりゃあ楽屋で何を話すも自由だし、テンションが下がっているのもこっちの勝手ではある。

 


言って私は、普段のイベントでこんなの感じたことはないのだが、奴だけは格別であった。ライブに向けて集中したいが、まとまらず。下は爆音、外は雨。何も言えず、逃げ場もない、軽めの地獄がそこにあった。

 


なんやかんや、出番。

良い環境ではないが、そんな程度でぶれてしまうのは、プロではない。気を引き締めて、出陣する。

 


ありがたいことに、今回トリを頂いている。

SEが鳴り、気合いを入れて、入場する。

 


約30分、あの時の私の、私にとっての、世界のすべてを震わせる。

 

 

 

出番終了、とても疲れた。

トラブルもあったが、魂はこもったと思う。悪くはない出来であった、と思う。

やはり、魂を込めねばならんな、と思った。

その結果人差し指を出血した、いいね。これは魂のアカシよ。

 


物販を終え、打ち上げもそこそこに、我々は撤退する。

何故か、その時いた共演者がみんな見送りに来てくれた。なんか申し訳ない。

何度もお礼と挨拶を交わし、車を発進させる。

 

 

 

我々バンドとは、場がなければ演奏ができない。自分の場を持ってない以上、どこかの場を借りなければならない。

 


どこかの場、と言ってもどこでもいい訳でもなく、ロックバンドが演奏して耐えられる、環境と状況がなければならない。

 


それらを自分で借りることもできるが、今回のように、誰かの借りに、出演をさせて頂くこともある。

 


「場をつくる」というのは、並大抵の労力では叶わない。精神面だけでなく、現実的な金銭面の話もある。どのみち、みな身を削って、人生を削って場を用意しているのである。


今回誘ってくれた、主催のやましん君に感謝をせねばならない。

 

 

そして、どのような因果があったかは知らんが、用意された場に対して、顔合わせの時からイベント自体にブーブー不満を垂れていたクソバンドが地獄に落ちますように。

冗談でも、公の場で言うことではない。それをフォローしないメンバーも、同罪である。


こみ上げるイラつきを近くのラーメン屋で流し込み。また車を出す。

 


広島のネットカフェにイン。

今夜はここを根城とする。

 

 

明日の起床時間を確かめ、眼を閉じる。