ヒズミ回想

とあるバンドマンの、変哲も平坦もない日常。

開封を止めるな

 

 

 

 

2020/9/14

 

開封を止めるな

 

京極夏彦魍魎の匣」読了。

f:id:iijitakahiro:20200914223431j:image

千ページを越える、鈍器みたいな文庫本である。読む手が、とても疲れた。

ミステリーである。安楽椅子ものでもあり、刑事物でもあり、超能力探偵も出てくる、その混沌さには感嘆する。

単純な人死に謎解きではなく「箱」というテーマが全面に散りばめられて、良い。出てくる箱は、物理的な箱や、精神的、概念的な箱まで様々、そういえばこの本の厚さも箱っぽくはある。

流石にこの文量は尋常ではなく、3週に渡って読みましたが、想像ほど長くはなく、やはりとても面白く、長い分、脳には良く馴染みました。というか千ページかけて面白くなかったら、本当に許せないので、良かった。

何にせよ、良き物語に出会えて、嬉しき。

 

最近の娯楽は、瞬間化してます。

寝ても覚めてもスマートフォン、何処を見ても広告、雪崩のような基本無料によって、企業は1分2分の余暇を奪い合う戦争を行なっています。

別にそれが悪いとは言わんですし、誰が望んだわけではなく、技術の進歩で自然にそうなったので、ある程度は仕方のない事です。

だけどその分時間のかかる娯楽、小説や映画なんかが特に、肩身が狭くなっているでしょう。千ページの文庫本なんざ、土台にも上がれないと思います。

日毎スマートフォンに触れている我々も当然例外ではなく、数年前に比べて、間違いなく長時間の集中力は落ちていると思います。これは良くない。

長いものが優れている訳ではないですが、2時間の映画には2時間になった訳があり、千ページの小説は千ページになった訳があります。どれも作品として過不足があってはならんものですので、2時間の映画を見て、その感動に浸るには、当たり前ですが2時間、その物語に入る必要があるのです。

10分のスマホゲーは、2時間の映画の感動には、間違いなく及びません(無論、逆も然りなのですが)。

とはいえ流石に私も、6時間の映画とかはそう簡単に見れないですが、2時間の映画を見るのが億劫になるのは、今後の人生のために、避けて通らねばならない道であります。

一編千ページほどの長い話を読むのは久しぶりで、やはり疲れましたが、怯まず向かって行きたいものです。この世には、私の出会うべき未開封の匣が、まだまだ残っている、はずなので。