2021/7/27
レンタルビデオを借りに行こう
主要人物含め何十人という人間が、人生や魂を込めて制作した作品を観る権利が14日間110円で買い叩ける混沌の場所、ここはレンタルビデオ店。そんな至高の場所ですら、配信やら何やらで下火なのがまたヤバい。人類はどこまで発展するのか。そのうち指パッチンすれば1作くらい観たことになるかもしれない。クソみたいなホラー映画なら十分ありうる。
映画に本に音楽も、今はもう電子化、サブスクや配信が主流であります。レンタルビデオ店なんか何年も入っていない、紙の本をほとんど買わない、という人もいるでしょう。まぁ便利ですからね、買っても嵩張らないし、何より店に行く手間がないクイックさは大変な魅力だと思います、私もちょくちょくお世話になってます。
しかしね、この、作品のタイトルできた壁を眺めるの、私は結構好きなんですよ。思いも掛けない作品があったり、気になるタイトルがあったり、昔見たけど内容を忘れてる映画を見つけたりすると、ついつい手に取ってしまいます。まだ見ぬ映画に想いを馳せ、もう見た映画を回顧しながら、ジャンルに沿ったあいうえおを辿っていくのは、私にとって心地よい時間であります。
例えばラインナップが同じだとしても、アマゾンプライムの一覧を見た時と、レンタルビデオの棚を見た時では、その後観る映画って絶対に変わると思います。要するに自身の「好き」がどのような形で刺激されるのか、その違いだと思います。それはアマゾンプライムが劣っているという訳ではなく、レンタルビデオで映画を選ぶ事にも一定の価値がある、という事です。それを私は主張していきたい。
何よりもね、アマゾンプライムの映画は別に今見なくてもいいけれど、レンタルした映画は返すまでに絶対に見なければならない。これ、めちゃくちゃ、でかいです。意地でも2時間を確保するぞ、という気概が生まれる。娯楽と刺激に飽和してしまった息苦しい現代では、そういう縛りを設けないと中々映画に向かえないもんです。
もちろん、返しに行くのは面倒です。手間は減らせるなら減らした方がいいと思います。しかし手間が増えることは、悪いことばかりじゃないのです。例えば一切の世話がいらない、完全に自足した猫を飼うのは、従来の世話がいる猫を飼うよりも完全に優れているでしょうか。同じ値段で美味さも同じなら、料理をするより買った方が絶対的に良いでしょうか。私はそうは思いません。考えながら作品を選ぶのも、つまらんやったなと思いながら自転車漕いで返しに行くのも、確かに手間ではありますが、無駄ではないと思います。
そういう、言ってしまえばどうでもいい時間が、案外人生を作っているもんです。空気の80%くらいは人体にほぼ影響のない窒素でありますが、酸素が100%だったら人は生きられません。きっとそういうもんです。
レンタルビデオ、良いですよ。近場にでも久々に行ってみては。映画は何の間違いもなく、人の心を豊かにします。これだけは絶対と言っていいと思います。