ヒズミ回想

とあるバンドマンの、変哲も平坦もない日常。

春世恋

寒い。

「もうそろそろいけるだろ」と、コタツ装甲モードを解除した私は、震えながらピーシーを打っている。

 

説明しよう、コタツ装甲モードとは、普段の机よりパソコンとスピーカー、その他機具を移動させ、コタツに入りながら諸作業を完結させるモードである。エアコンは喉に良くないと中途半端なプロ意識を持った私は、もっぱら冬はこの形態を取っている。

しかし、コタツ装甲モードは暖かさと引き換えに、その心地で作業効率を根こそぎ奪う悪魔の契約。11月くらいから変形していたが、そろそろ、作業にも加速をかけねばならん。もう3月だし、いけるだろう。つい先日、元の机上モードへと形態を変えたのである。

 

しかし、寒い。なんだこれは。

適宜、沸かしたお湯を飲みながら、液晶と向かい合う。3月ってこんなに寒かったか。ダウンジャケットを着込んで、震えながらキーボードを打つ。暖かみが欲しい。春よ来い、春。春かコタツ。はやく来てくれ。

 

震えながらも、何かせねば、とりあえず、曲を作り始める。

今日は休みだったので、昼過ぎよりドラムを作り始め、夕方にはもうボーカルまで入れてしまった。構想はあったとはいえ、驚異のスピードである。わたし、やるぅ。

構想段階でいい曲になるとは思っていたが、土壇場でいくつかアイデアを組み合わせ、中々の快作となった。小躍りをする。

そういえば、完成も間近になった頃から、寒さなんて何も感じなかった。やはり、わたしの春はここにあるのかもしれぬ。

春よ、また来い。