ヒズミ回想

とあるバンドマンの、変哲も平坦もない日常。

夕暮れの記録

 

 

 

 

2020/12/1

 

夕暮の記録

 

夕暮れ時、川辺を徘徊していた。ジャージの上に無理やり重ねたダウンジャケットを着ても、外は少し寒かった。

戻るのも億劫なので、そのまま徘徊を続行する。辺りにいる会社帰り、学校帰り、犬の散歩、ランニングのどれかとすれ違いながら、12月の空気をあらためて吸い込んだ。夕暮れの薄いオレンジ色が、山際をかすめていた。

途中、マフラーを巻いた女子高生が立ち止まっていた。何をしてるのかと思ったら、携帯で夕暮れを撮っているようである。

この川と夕暮の相性は抜群なので、撮りたくなる気持ちはよくわかる。なのに私はその女史が写真を撮っている姿に、少しだけ胸が打たれた。

彼女は、この夕暮れに感動したのだ。大きな感動かもしれないし、小さな感動かもしれない。しかし確かに感動したのだ。写真に残しておきたい何かがあったのだ。

きちんと、風景を見ている。周りの人が見ていないというつもりはないが、世間には夕暮れにも、満月にも、野良猫にも、足を止めない人間はいると思う。彼等にとって風景はただの背景であり、歩く道の彩りくらいにしか見えてないのだと思う(もちろん、私の知らない所で足を止めて眺めている可能性はある)。そんな中で、彼女は、スマートフォンのシャッターを切ったのだ。

なんとなくだけれど、彼女はその写真を、ツイッターやインスタグラムにアップしたり、友人に見せたり、そういう事はしないんじゃないかと思う。そこまで劇的な夕暮れでもなかった気がする。それでも彼女は、その写真を消したりはしないんじゃないかと思う。少なくとも、だいぶ先まで。

 

妄想から立ち返ると、さすがに寒かったので、コンビニに入場し、コーヒーを買って帰る。帰る頃には夕暮れはほとんど沈み、夜になりかけていた。私はコーヒーをすすりながら、さっきの夕暮れと女子高生を思い出していた。