ヒズミ回想

とあるバンドマンの、変哲も平坦もない日常。

ハイタツ、そしてまたひとつ

2023/3/18

福岡天神、四次元にて、「シンブンハイタツ」ツアーのツアーファイナル「ハイタツ、そして朝」やってきました。

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ツアーファイナル、その自主企画といえど、実際には準備や当日の業務が少し増えるくらいで、会場に行ってライブをする、という労力的な面では普段のライブとあまり変わりません。しかしやはり自主企画、しかもツアーファイナルとなれば、少なくともツアーの最初から、もっと言えば音源のレコーディングくらいから積み重なった想いの、その総合算みたいな日なので、精神的な面ではかなりの重圧があります。言ってしまえば入試みたいなもんです。

そして今日も凄まじい重圧でした。自主企画もツアーファイナルも慣れたもんですが、33歳でやるツアーファイナルはこれが初めてなのです。そしてこの歳になれば、この歳になっても第一線でバンドをやっていくためには、きちんと随所で、いろんな事を証明していかねばならんのです。慣れてどれだけ手間が減っても、ヘマだけは決してできません。

昼過ぎ頃、四次元に向かい歩道を蹴っている時から、視界の幅がいつもより四分の一ほど削られているのがわかりました。搬入をしても、リハをしても、ごく弱火でジリジリと炙られているような、そんな焦燥がありました。しかしウエストでうどんを食べたら、ようやく少し落ち着きました。やはり飯は偉大。ウエストは、偉大。

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顔合わせをしてコーヒーを飲んだら、やっと心が整った気がしました。今日は対バンに同い年のアバウトもいて、彼等がいるとどこでもサークルの部室みたいな空気になるので、そこでまた少しだけ安心。やはり同い年は心強い。

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開演したら、長崎、世界電球のライブを観る。23歳という若さで、センスに溢れ人気もあり、既に随所を飛び回ってる彼等には正直嫉妬します。ライブを観ても将来性しかなく、それは私がかつてなりたかった姿そのもので、正味めちゃくちゃに嫉妬しています。しかしそうなれなかった私は、私なりに頑張るしかないのです。

次いでアバウトが始まりました。下手したらもう10年くらい一緒にやっている気がします。10年前はもっと若さと爆発力で圧倒していた奴等ですが、今は今で人情と情感に溢れていて、良いです。昔の曲も、昔とは違った味が滲み出ていて、良いです。奴等も我々も、結構面白い、良い歳の取り方をしてるんじゃないかと思います。ひょっとしたら、だからまだバンドが続いているのかもしれんです。お互いに。

次はいよいよ我々、いよいよという今際の時、今回のツアーの出来事が走馬灯のように駆け回る、なんて事はまるでなく、当然そんな暇はまるでなく、出番前はただ目の前のライブのことだけを考えていました。ずっと前から企画をしていたライブ、ここ数日の思考をすべて支配したライブ、そのライブも、SEが鳴ったら始まります。

 

そして、ライブをしました。いくら重圧があっても、いくら考えていても、SEが鳴ってステージに上がれば、すべての思考と行動はライブに集約されます。読んで字の如くの一心不乱、ただ鳴らし、ただ叫び、ただ頭を振り回すのみです。

まぁMCではね、流石に頭を使いました。「我々は金にならないバンドである」というのはもっとカラッと笑って欲しかったセンテンスなのですが、思いの外、皆様めちゃくちゃ苦笑いをされていて、ちょっと外してしまいました。優しいですな、みなさん。なんかすみません。

MCが明けたら、あとはもう曲をやるのみでした。いつものように曲をやっても、やはりツアーファイナル、いつも以上の想いが込もっているので、色んなものがとても重いです。それでも、振りかざすものが重ければ重いほど、振り下ろした破壊力はあがるってもんです。

ぶん回して、打ち据えました。アンコールでは「その咆哮で」という新曲をやりました。我々のこれからを担う曲だと思っています。その方向で、叫び続けていきます。お客さん、アバウト、世界電球、四次元、そしてツアーに関わった全ての皆様、ありがとうございました。

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そして打ち上げ、四次元にてドリンク片手に、ぺちゃりくちゃりと話していました。相も変わらず、半分以上は音楽とは関係のない話で、とても楽しい打ち上げでした。別に音楽の話が駄目なわけではないのですがね。基本的には、音楽以外の話で盛り上がってる打ち上げの方が楽しいです。打ち上げっていうのはそういうもんです。きっと。

打ち上げが終わり、小倉へ戻るノンフィクション号を見送ると、私は残った世界電球のおふたりとラーメンを喰らいに山ちゃんへ。

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ツアーファイナル、そのライブ後のやまちゃんは、本当に、泣きそうになるくらい、美味い。世界電球のおふたりと話ながら食べていると、何故か何処かで深居優治の話題に切り替わり、笑う。なんでだ。そういえば、先月にキッチンと来た時も奴の話題が出た気がする。なんでだ。

すべてを終わらせて店を出て、世界電球のおふたりを見送ると、私はひとりになる。ノンフィクション号も行ってしまい、当然のように終電もない。タクシーを使うから迷いながら、最終的には自転車をレンタル。ここから私の住処までは自転車で30分ほどかかりますが、春じみてきた夜の空気と、飽和するような解放感が心地よかったので、のんびりふらふら、ペダルを漕いでいました。ギターも背負って重かったのですが、ツアーファイナルを終えた今の私は正直、無敵です。なんでもこい。

鼻歌を夜空に溶かしながら、今日のことを思い返すと、またバンド辞められない理由がひとつ、増えそうな気がしました。辞める理由、ってのは常にゼロじゃないのですが、それを囲んで圧殺するくらいの辞められない理由があるので、やはり私はまだ辞めないのだと思います。

夜の町、時折ニヤけて気持ちの悪い顔を晒しながら、またペダルに力を入れていました。