ヒズミ回想

とあるバンドマンの、変哲も平坦もない日常。

怖い本

 

 

 

 

2021/2/9

 

怖い本

 

「牛の首」という話があります。世界で一番怖い話なのですが、聞いた人はみな怖すぎて死んでしまうので、その話を知っている人はいません。そういう、お話です。

そんな話を思い出しました。こちらの本です。もっとも、こちらの本は実在しますが、電子書籍で。

 

「忌録 document X」阿澄思惟

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「きろく」と読むようです。ホラーです。世にも恐ろしいホラーです。昨日ブログでもツイッターでも言っていた、衝撃的な作品です。

小説、というには不十分なものです。物語の断片の寄せ集め、新聞のスクラップみたいな本です。しかし、そこに確かに著者の意識があって、著者の膨大な想像力があって、著者の滲むような悪意があります。

匂いや音が、目に見えないが確かにそこにあるように、悪意が、どこの誰のものとも知らないドス黒い悪意が、私の日常圏内にもあるかもしれない。私が蓋を開けるまで、じっと滞留して私を待っている、そんな悪意がこの日常の何処かに「必ず」ある。そんな気がする。

こういう怖い話で、よく「一番怖いのは人間だよ」なんて言われますが、一番怖いのは「人間の想像力」だと、私は思います。想像力という温床に、悪意という種が撒かれ、それにすべての養分が吸い取られ生い茂っていく。

そんな事を、思わされる、本でした。

 

この本の、内容たる話も勿論怖いのですが、この本が存在する、というのが私には一番怖い。著者の意識を想像するだけで、身も震える思いです。 

この作者、2014年にこの本を電子書籍で出したきり沈黙しています。阿澄思惟という名前も、映画界で匿名を意味する「アラン・スミシー」のもじりだという話です。

本の内面も外面も、あらゆる意味がわからない、意思がわからない。7年前の本ながら、未だに解かれてない謎がある。誰も見ることのできていない文章がある。

私が今まで見た作品で、ぶっちぎり、一番怖い作品です。ホラーは結構平気な私が、震え上がる思いです。

 

短編集なのですが、一応、一作だけ読めます。URL貼っておきますが、読まない方がいいかもです。マジで。後味が悪いどころか、初めから料理ですらなかった。

http://bungoku.jp/grand/2010/

この中の「みさき」という作品です。

ちょっとだけ、びっくりする要素もあります。ご注意。