ヒズミ回想

とあるバンドマンの、変哲も平坦もない日常。

部屋と欲望と私

2023/2/3

我々ノンフィクションは現在ツアー中であります。2月の後半はちょっと空きますが、それを除けばこれから大体毎週末はライブという、ボチボチのペースで予定が埋まっております。

「ツアー中」というと凄く忙しそうなイメージがありますが、我々くらいの頻度ならばそうでもないです。むしろ、「ツアー中だから」という理由でこの期間は他の予定を入れていないため、比較的に時間があったりしまして、結果「ツアーが始まったから時間は空いてる」という不思議な結果に陥っています。月に十何本もライブをやる猛者みたいなバンドは別ですが、平均週一くらいならばそうでもないです。

大体、ツアーが始まるまでが製作やらなんやらで忙しかったりするので、その反動もあってか、最近はちょっと時間を持て余しています。製作中の忙しさがなごり雪みたいに精神に溶け残っているので、ちょっと遊んだり、本を読んだりしていても「こんなことをしていていいのか」と心がザワついたりします。実際はまぁ、例え忙しかろうが遊んだり本を読むことに、それほど罪はないのですが。

なので、結果として練習をしたり、曲を作ったり、録音の勉強をしたりすることが合法的だったりします。そうじゃなくても部屋の掃除とか、溜まっている洗い物とか、何かしら生産性のある事をしなければ精神が落ち着きません。定期テストまであと2週間くらいの、あの時くらいの感覚がずっと続いてしまっています。もはや懐かしい感覚ですが。

もう少し、欲望に忠実に動けたらいいなと思う時があります。生活習慣、食習慣もなんのその。遊びたくなったら遊び、喰らいたい時に喰らい、眠くなったら眠り、また遊びたくなったら遊ぶ。そういうことができれば、どれだけ楽しいのでしょうか。羨ましい限りです。

大事なのは、たぶんそう動いていても、やらなければならない仕事、作業、行動なんかはしっかりできると思うのですよな。勉強嫌いな人間でも試験前日には机に向かっているように、なんだかんだ人間ってのは必要になれば動けるのです。なので恐らく、欲望のタガをもう少し外しても、人生はそこそこ上手く、しかもより楽しく回るのだと思うのです。

しかしね、私はそれができんのです。私はそういうこと、やった方が良いことを、そこそこ「真面目」にこなすことによって現代まで生き延びてきた人間なのです。そりゃあもちろん欲望に動かされることもありますが、それでも最期の一線みたいなのは常にキープしてきました。理性としての偏差値みたいなのは、それなりに高いと思います。

なのでね、欲望に忠実、そう動ける人が本当に羨ましい。たまにいますよね、ゲームにハマっている期間は寝食以外ずっとゲームしてるみたいなヤツ。これが美味いからとそればっかり食べているヤツ。ああいう人は本当に凄い。欲望のままに動くっていうのも、ある意味では才能なんですよ。できない人には一生できない。真面目であってしまった人間は、真面目であることが自己の存在であり防衛手段であり、アイデンティティみたいなものなんです。

もちろん一長一短なのは把握しています。それなりに生活習慣みたいなものを意識している、私の方が健康面なんかではより優位に立てるでしょう。しかし欲のままに動く人たちの、あの目を潰すような鋭く濃い輝きに、私はいつも憧れているのです。