ヒズミ回想

とあるバンドマンの、変哲も平坦もない日常。

5月31日 サーキットサウスでの諸事情

本日は、周南riseにて、ライブである。

朝、10時、ソウイチロウ君宅にて、唸りながら起床。いや、起床はしていない。意識が覚めただけで、まだ目すら開いていない。

ソウイチロウ君は、すでに起きて準備を始めている。私は、起きられない。身体が、意識が、重すぎる。なんだこれは、どうしたらいいのだ。

風邪の類のキツさではない、頭鼻喉、全て異常はない。ただ、身体と意識が、異様に重い。昨日は1日、それなりに休みに勤めたはずだが、一応、先日病み上がってからはそんなに経っていないので、足りなかったのやもしれぬ。

呻き声を上げながら、11時に起き上がる。昨夜練習で切れた弦を張り替えるつもりだったが、その余力はない。シャワーを浴びて、出る準備をする。なんとか、動けるくらいまで回復したのち、ソウイチロウ君とともに家を出る。


車に乗る。ソウイチロウ君運転の元、まずはガソリンを入れ、それか、仲間たちを迎えに行く。みょーちんを拾い、「今起きた」というお嬢も拾う。待っている間に、ブログなどを書いておく。眠そうなお嬢と合流して、いざ、周南へ向かう。

下道で行く予定であったが、ナビを見ると時間がギリギリである。深夜調べた時と、ナビの予測時間が違いすぎるのはどうにかならんか。いや、仕方ないのはわかっているが。

諦めて、高速へ。小倉東ICより、自動車道へ乗り込む。じきに橋を渡り、山口県に入る。山口県、今月、何度目だろうか。高速の、何もない山の風景すら、見慣れてしまった。

車内は変わらず、阿呆な話をして笑い合う。お嬢はじきに眠る。残った3人で、また、話す。さすがにツアーの本数を重ねて、話題は徐々に減っていったが、それでもまだまだ、我々は、笑いあえる。よいね、よい。楽しい。


時間が多量に余るので、SAにて派手な昼飯でも食おうと画策。美東SAに寄るも、飯が軒並み高かったので、すぐに次の佐波川SAへ。吉野家があったので、大盛りに紅生姜を乗せて、もしゃもしゃする。派手な昼飯、とは。

存分に時間を潰す。この時期のこの辺のSAは、ツバメの巣がある所が、結構ある。ここでは、もう巣立つ前くらいの色付いたツバメが三羽、それでもピーピーと親を待っており、とても可愛かった。いずれ皆で巣立って、伽藍堂の巣が残るのだろう。それを想像するだけで、空想は情緒が溢れる。

 

やいのやいのと行軍し、周南、場所はriseへと到着する。挨拶を交わし、荷物を搬入。弦を交換し、リハーサルを終えて、一息。パソコンを持ってきたので作業をしようと、顔合わせの時間だけ確認し、私はwi-fiを求めて街へ繰り出す。

 

しかし、周南に来たのならば、猫を、見つけねば、ならない。これはもう、私の絶対である。商店街を歩きながら、見つけるたびに「はにゅうん」と喉を揺らす。猫好きにとって、猫という奴は、見つけただけで「50円もらえる」くらいの喜びがあるのである。近づいて逃げなければ100円、触らせて頂ければ200円である。つまり、猫が多いこの街は、おトクである。

ある程度堪能したら、近くの古本屋へ。小さい古本屋だが、ここは結構良い。私が見るのは小説の文庫くらいだが、近場にセンスの良い奴が住んでいると見た。友達の本棚に並んでいたら好きになる、そんなラインナップがある。

だが生憎、最近の私にはあまり本を読むタイミングはない。前から読もうと思っていた、方丈記の現代訳が100円だったので、それだけ買って店を出る。

 

さて、忘れていた、wi-fi探しだ。しかし駅の方に向かっていたら、徐々に徐々に朝の疲労を思い出し、身体が不調を訴える。どうするか悩んだが、一番優先すべきはライブである。やらなくていい理由を3つくらい拵えたら、riseへと戻る。途中、別行動だったノンフィクションの4人が、何故か一箇所で鉢会う。話して笑って、また散とする。

我々は、仲が良い方だと思う。私はノンフィクションしかバンドをやった事がないが、このバンドは、あまり仲が険悪になった事はないように思える(私特有の愉快な勘違いかもしれないが)。「仲が悪いバンド」をたまに聞くが、未だに、どういうものなのか、理解はしがたい。楽しいのが良いよ、せっかくやるなら。

ひょっとしたら、これは我々がメンバー2人だから、言える事なのかもしれんが。


体調を考えて、一度車へ行って休む。もう車内は、密閉すると暑くなる。車中泊も厳しくなるな、ここからは。30分ほど眠ったら、再びriseへ。

顔合わせを済まし、開演準備へ。体調は、幾分マシとはいえ、まだ優れない。私は一度コンビニへ向かい、エナジードリンクと、補給のゼリー、コーヒー買い、飲みながら戻る。ここまで来たら、体調が悪くても「切って再起動」はできない。ここから、無理矢理でも、加速させるしかない。


公演が始まる。弾き語りから、ゆっくりとした始まりである。曲を聴きながら、mcを考える。時折目を瞑って、呼吸も整える。

本日は、トリを頂いている。対バンを見ながら、体力と、テンションの調整を、整えていく。が、どうもやはり、体調、しつこいように、私にまとわりつく。それだけが原因ではないが、セットリストも少し、変更をする。買ってきたゼリーとエナジードリンクで、精神をこじ開ける。

出番である。SEが鳴って、会場へ出る。挨拶をして、曲を始める。立ち上がりは悪くない、音もよく聞こえている。はじめにあった違和感も、何曲か後には消えていた。喋りながら、叫びながら、掻き鳴らしながら、6曲、十分にやりきる。良かった、なんとか、命拾いをした。ちなみに、弦も切れなかった。久しぶりである。こちらも、嬉しい。

終わり、物販を行い、公演は終了する。片付け、挨拶、清算をして、打ち上げが始まる。瓦そばをつつきながら、会談を楽しむ。「ロッチの中岡に似てる」と言われる、うん多分それ、悪口だね、大いに笑う。


打ち上げが、終わる。我々は搬出を終え、車を発進させる。ソウイチロウ君が運転、助手席はみょーちん、お嬢は最後部で眠り、私も中段で眠らせてもらう。体調がアレなのと、帰ったらまた作業があるからである。

ここから、お嬢が明日福岡でライブのため、そのまま送らねばならぬ。周南から福岡、そして福岡から北九州、これをなるはや、という、少し長い行程になる。しかしソウイチロウ君は「大丈夫」と言う。私の体調もあるので、一応みょーちんにもお願いして、居てもらう。甘えさせてもらう事に感謝しながら、私は中段にて足を曲げて、目を閉じる。

 


しかし、目を開けたら、北九州にて、みょーちんが降りていた。聞けば、手伝ってもらうのが申し訳ないらしく、ソウイチロウ君の一存で降ろしたという。ソウイチロウ君に大丈夫かと聞けば「大丈夫」と答える。ならばすまないが、私はまだ、眠らせてもらう。やはり体調、まだよくはない。

目を覚ましたら、福岡への高速道路、SAに停まっていた。ソウイチロウ君は、寝ていた。大丈夫じゃ、ないやんけ。私の体調は、お陰様、だいぶ回復していたので、半ば無理矢理、運転を変わる。ソウイチロウ君に中段で眠ってもらい、発進させる。何故か声を発しないグーグルナビにイライラしながら、高速を降り、福岡へと着く。お嬢を知人宅まで送り届け、私は福岡の、事務所まで戻る。


車内で、少しだけ、ソウイチロウ君と、話す。今後のことと、今回の、事である。

そもそも今回の一件がなくても、話すつもりではあったが。


私は説教ができない。怒らないのではなく、怒れない(そもそも、滅多な事では怒るに値しないが)誰かに向けて、怒りを飛ばす事を、忌避すらしてしまっている。なのであまり、強くは言えない。それが良いのか、悪いのか、私には、よくわからん。が、意志は伝える。伝わると信じて、伝える。


車を降り、ソウイチロウ君を送り出す。

私は事務所に戻り、眠る。