ヒズミ回想

とあるバンドマンの、変哲も平坦もない日常。

ガキのころ

 

 

 

 

2020/11/15

 

ガキのころ

 

とある小説を読みました。テンポも良く、文章も読み易く、最後の展開も中々のもので、まぁ面白かったのです。

ですが、その本の帯、黄色に黒字でデカデカと「驚愕の結末!」「ラスト10ページで世界が一変!」「禁断のミステリー!」「ネタバレ厳禁!」なんて書かれているもんですから、読む前からハードルが高まってしまったのです。どんな展開が?叙述トリックか?作者の思惑は?ワクワクするたび、私の中でハードルは天高く増築されていきました。

そして、結果、そこそこの面白さにも関わらず、ハードルには大きく届かず、残ったものは消化不良。昼下がりにひとり寂しく、ハードルを解体していました。

 

思えば、結構本を読んできたモノです。映画も観てきました。中学生くらいからミステリーが好きで、数々のどんでん返しに悶絶してきました。ハードルを宇宙まで飛んでいったり、手品のようにハードルを透けて通るような作品を見ては、衝撃を受けたものです。

そして今、どんでん返し、驚愕の結末、そういうモノに、慣れすぎました。どんでん返しにしたって頭の中で5パターンくらいが固まっており、それをすべて外して初めて「どんでん返し」になりうるという始末。物語は消化吸収されますが、どんでん返しやトリックは身体にいつまでも残ります。慣れていくうちに一度食らった技は二度と食らわない、アヌビス神のような体質になってしまいました。困ったもんです。

それでも、まだまだ身体は求めてしまうものです。中学生の頃に食らった、どんでん返しの衝撃が、現実が乖離する瞬間が、脳味噌がバグる感覚が、いつまでも忘れられないのです。

飢えて彷徨うその様は餓鬼道が如く。文字通りガキの頃のあの感覚を、死ぬまで追い求めて行くのでしょう。嫌なもんだぜ。さて次は何を読もうか。