2022/7/17
膝上の熱量
帰り道、ベンチに猫が寝ているのを見つけた。
少し近づいてみると、首輪をしていることに気がつく。耳も欠けているので、地域猫のようだ。何となく見た感じ、少し弱っているように見えたので、大丈夫かと近づいてみると、また弱々しくニャァニャァと鳴く。そして私がベンチに座ると、よそよそと膝上に乗ってきて、眠り始めた。
体調が良いのか悪いのかは結局わからない。第一悪かったところで私に為す術はないではあるが、兎にも角にも猫は私の膝上に丸まり、睡眠を始めた。
どうしたものか、言って、私も早く帰りたいではある。緊急は少ないにしろ、やる事は山積みである。しかし、猫は私の膝に温もりを与えながら、スースーと寝息を立てている。これを払い除ける事が、私にはできない。
今夜は少し涼しいとはいえ、夏の夜には違いない。猫も膝上に乗るには暑かろうと思う。現に私の実家の飼い猫のさくら嬢は、夏場は人の膝上には来たがらない。
しかしこいつは、今私の膝上にいる。夏の夜に私の体温を一心に浴びながら、それでもここを離れない。温もりが欲しいのか、単に良い寝床として扱われているだけか。とにかくコイツは、私が危害を加えるなどとは一切思ってないらしい。私がその気になれば、1分も経たずに絶命するだろう。無論、そんな気は全くないが。
私は、早く帰りたい。しかし帰って何をするかといえば、幾許かの作業と少しの娯楽、ある程度の休息、そのくらいである。それに比べてコイツはどうか。地域猫はみんなで世話をする猫ではあるが、それでも寿命は5〜6年らしい。病気かや怪我でもっと早い可能性もあるだろう。私の送る1日とは、遥かに違う1日を過ごしているはず。そう思うと、動くに動けなかった。
猫はやがて、膝上から立ち上がり胸元まで身体を寄せてきた。コイツが満足するまでここに居ようという気持ちではあるが、私の中ではまだ少し、早く帰りたいなんて思っている。相変わらずグズグズした人間であり、嫌になる。せめての折衷案として携帯を出し、ブログなどを書いているのである。