ヒズミ回想

とあるバンドマンの、変哲も平坦もない日常。

1月23日有限が過ぎる。

朝は9時に「うぉぅん」って唸りながら起床。

アラームを止め、隣の部屋で寝ていたソウイチロウ君に声をかける。返事はあるが、起きる気配はない。

電気ケトルに水を汲み、お湯を沸かすも、沸騰を待ちきれず、喉に冷たい水を流し込む。少しだけ身体が震えて、少しだけ、目が冷める。

 


本日はレコーディングの最終日である。

言うて10年もバンドやっているので、こういう日にはそれなりに慣れっこである。レコーディング自体は久しぶりなので、心配事は多々あったが、いざ始まってみると、それなりに瑕疵なく流れて行く。

大体のものは、そうなんだよなぁ。始まってみれば、後は推進力に任せられる。

始めるのが、大変なんですが。

 


ソウイチロウくんと、昨夜スーパーで買い込んだ朝食をもっさもっさ食べる。

納豆、味噌汁、おにぎりを二個にゆで卵を二個。当然お湯とバナナ。

体を回復させるため、余分に食べる。

余分が余計にならなければいいが。

 


朝を整え、スタジオへと向かう。

最終日ともなると、それなりに疲労が溜まってくる。しかしまぁ、慣れっこであるよ。

昨日ほとんど同じ工程で、スタジオへとたどり着く。

 


10:30録音開始。

本日も、私のギター、ソウイチロウ君のギター、私の歌の順番で録る。

七面倒な楽曲たちは、昨日あらかた和解を済ませたので、本日はそれなりに八面六臂となるだろう。そう思ってストラトキャスターを構える。

 


結果、まぁ、まぁそれなりに、まぁ。

 


普段は面白いエンタメを見るか、ボードゲームをやるか、エレキギターを爆音で鳴らすかくらいしか楽しみのない人間なので、エレキギターで小さい音を鳴らすということにあまり慣れていない。それゆえの苦戦であった。

私もギターも、なんだかそわそわしながら空間を鳴らし、13:30、録音を終える。

 


ここで昼を回ったので、皆で昼食を食べに行く。麺と肉と野菜を豚骨スープで煮込んだいわゆるちゃんぽんなるものを食べる。そういえば一昨日も食べたなぁ、と思いながら、食べる。

うまいものは、うまい。

 


14:50。

スタジオに戻り、ソウイチロウくんのギター録りが始まる。やることがあまりない私は、率先してパシられに行く。金銭と体力を使い、セブンイレブンのコーヒー4つをスタジオへとワープさせる。

飲むなり、ソウイチロウ君のギター録りを自主性にまかせ、歌録りのために、まったりとする。

体を休めたり、ブログを書いたり、少し寝たり、「僕のヒーローアカデミア」をちょっと読んだりする。私は八百万さんが好きです。

時折、ソウイチロウ君のギターをチェックしつつ、精神を整える。

 

 

 

電気のつけてなかった部屋が暗くなっていることに気づく頃、ソウイチロウ君がギター録りを終える。お疲れ様だぜ。

 


19:00。

さて、長い戦いであった、

曲たちよ、戦いを終わらせようではないか。

歌詞カードを手に、ボーカルブースに入り、ヘッドホンをつける。

そして私は、歌う。

 


私は歌が苦手である。

正確には、上手く歌うことが苦手である。

上手く歌うことに憧れはある。

上手く歌いたいと思うことは常にある。

しかしながら、歌手どもよ、上手い歌を歌うより、いい歌を歌うことの方が大事だと言うことを、覚えておけ。

 


精神で声帯を震わせ、魂で喉を歪ませ、思想はハラの中から吐き出す。

これは間違いなく、私の、歌である。

この世の中に於いて、それがどれだけ尊いことであろうか。そう私は思う。

 

 

 

ただ、歌は上手くならねばならぬ。

これは願望と言うより、義務である。

上手い歌を歌う必要はないが、歌が上手くなるのを放棄してはならぬ。

反省点は山々。精進をせねばならぬ。

 


そして、22:40歌録りを終える。

 


今日録った曲は、大声を出す曲が多いので、録り終えた頃には酸欠になっていた、頭が痛み、脳が朦朧とする。

身体中がワンオペみたいになっているのを感じる。これはしんどい。

 


まぁ何はともあれ、録り終えた、終わった。お疲れ様だぜ。

ボーカルの音程を修正してもらう間、ソウイチロウ君とうどんを喰らいに行く。暖かいダシの香りで、全身の細胞が落涙する。

 

 

 

戻り、音程の修正に入る。

 


我々であっても、やはり多少なり音程の修正はする。せざるを得ない。

それはもちろん、修正なしで完璧な音源が録れるのが1番ではある。しかし森羅万象全てのものは有限であるがゆえ、我々の予算も時間もまた有限である。無限であるならば、いくらでもやり直しをしてあるが、残念ながら有限である。

ので、アクを取るように、歌が修正される。

 


修正といっても、そこまで大がかりに変身するものではないです。

大抵は我々です。

ここはもう信用してもらうしかない。

 

 

 

煮詰まる深夜のスタジオで、確認を繰り返す。

蓋がカタカタ言いだした頃、作業が終了する。

時刻は深夜の3:00を回っていた。

正直に、しんどい。

 


最終日なので、スタジオ内を片付け、お金を支払い、帰宅する。

実に、いや本当に、居心地の良いスタジオである。必ずまた次回、お邪魔をする。

 


次の日程と様々な要素を整え、帰宅する。

時刻は、4:00。

夜行性でない生物が起きている時間ではない。

 


帰宅した後、寝巻きに着替え、歯磨きをし、そして今4:30、ブログを書きはじめる。

正直に、正直に、今本当にきつい。

なので、レコーディングともあれば、語れること、書くことは無限に存在するのであるが、私の身体能力は間違いなく有限なわけで、眠ることにする。

 


現在5:03。

あー、ちょっとまじ、無理です、眠ります。

おやすみなさい。