ヒズミ回想

とあるバンドマンの、変哲も平坦もない日常。

1月22日便箋の中のハナシ

 

何故か私は、ライブやレコーディングの、本番の当日は、目覚めが悪く、寝起きがグズる事が多い。

しかし、本番の翌日は、何故か目覚めが良く寝起きがスッキリな私。

 

本日は本番翌日であり、本日も本番である。

 

果たしてどうなるかと思われたが、朝は8時、それなりに綺麗に目覚める。

まぁまぁそれなりであった、面白くもない。

お湯とバナナでキメる。

 

とりあえず、寝ているソウイチロウ君に朝から大量に喋りかけ、ステキな朝をプレゼントする。

起床後はコタツに入って、朝食。

私は味噌汁に納豆、買ってきたおにぎりを2つ、本番なので余分に食べる。

ソウイチロウ君はショコラデニッシュを頬張る。

嫌がらせを兼ねてしきりに味噌汁を勧めるも、無視される。

 

朝一で銭湯へ行く。

ライブにしろレコーディングにしろ、渦中の銭湯の悦楽は、半端ではない。

これが、これが命か、ってなる。

しかしあまり時間はない、伸ばした羽がふやける前に上がる。

 

スタジオへ向かう。

運転手ソウイチロウ君は私をスタジオ近くで下ろし、我が家の切り忘れたコタツを切りに戻る。間が抜けておる。

 


さて、レコーディングするのは全6曲

本日は、3曲を仕上げる。

10:30。まずは、私がギターを掲ぐ。

私はギターが下手ではないが、上手くもない。

単純なものならいざ知らず、テクニカルなものが入ると、録音するのに時間がかかる。

うんうん唸りながら、私の根性と、近代の音楽編集技術の推移の結晶によって、3曲の録音を終了する。

 


帰ってきたソウイチロウ君を前線に送り、私はみんなの昼食を買いに行く。ふんふんと、録音予定の曲の音程を確かめながら、弁当を求め歩く。買ってきた後、私は体が欲するままに、1人ラーメンを食いに行く。

近くにあった長浜ラーメンは、うまくもまずくもなかった。が、すさまじく「ラーメン」であった、満足。

長浜ラーメンとは、そういうジャンルである。

 


帰投、ソウイチロウ君はジャガーを構えて順調にヘッドショットを決めていた。

私の歌の出番までもう少しあるので、体力を温存すべく、眠る。

 

 

 

目が覚めると、ソウイチロウ君が硝煙と共に現れる。思いの外、はやい。ご苦労であった。

聞いてみると、出来も悪くない。やるやん。

私も頑張らねばならぬ。

 


さぁ、歌録りだ。

歌うのだ。

叫ぶのだ私は。

そう意気込んで、苦戦する。

それが毎年のパターンであった。

 


今年は、ちがう。

初めから苦戦するだろうと思っており、案の定苦戦をしていた。

うたうのって、難しい。

誰だこんな歌作ったのは、私だ、おお格好いいぞお前、ありがとう。

 


しかしなんとか、絞るように録り終える。

「歌が上手くなりたい」とはそんなに思わないが、もっといい歌を歌えるようになりたい、とは思う。

 


せめて、残したものを、刻んだ歌を、心から誇れるようには、ならねばならぬと思う。

(別に、過去の音源を誇っていないわけではない)

 


レコーディングって、手紙を書くみたいなもので、普段話すのが上手い人間が、どれだけ文字を上手く書けるか、みたいなものなのですよ。

結局は、テキストを伝える技術。

 


厄介なのが、字が上手く書けても、話す能力にほとんど関与しないところなのですよね。もちろん、逆も然りなのですが。

 


そして、私は話したい人間なのである。

しかし、手紙も好きなので、頑張らねばならぬ、という話。

 


 事務所に戻り、ソウイチロウ君はちょっと飯を食ったらスクリーンセイバーみたいに消えていった。

だめだ、私も、眠い。この文章を打ったら、寝るつもりだ。

 


明日はレコーディング最終日。

祈りながら、眠る。