ヒズミ回想

とあるバンドマンの、変哲も平坦もない日常。

2月27日たのしいこと

朝、またもGtソウイチロウ宅にて、10時に目覚める。

睡眠、ガッツリ9時間頂きました、さすがに、元気である。

 


本日は、小倉FUSEにて、ライブである。

 


しばらくは、携帯をいじるなどして、適当に目を覚ます。

少しして、ソウイチロウ君も起床する。適当に挨拶を交わす。談笑したり、今日の予定を確認したりしながら、パンを焼き、パンを食べる。「寝起きの11時に食べるパンは朝食か昼食か」と考えながらシャワーを浴び、準備を整える。

 


少しして、家を出る。

車に荷物を詰め込み、エンジンをかけ、行く。

 


どんよりと曇るこくらの街を機材車が行く。

平日だってのに、街には車が多かった。

みんな忙しいのか、2月、少ないもんな。

 


「私がいかにして『異世界転生』ものが嫌いなのか」を論理的に説明しながら、サポートDrみょーちんを迎えに行く。3人で暴論と詭弁を酌み交わしながら、スタジオへ向かう。

 


ライブに向けての練習ができなかったので、確認のために、会場入り前にスタジオに入る。サポートBa.お嬢とも合流し、練習を開始する。

 


本日披露する30分の曲目と流れを、整頓し、詰める。組み合わせて、貼り付ける。30分の作品を作り上げる。

大事なのは流れ。空間芸術は、聴き手の意識の流れとの戦いである。急所を突いて、揺らさねばならぬ。

 


グッと合わせて1時間、練習を終える。

会場に入るまで少し時間はあるので、ゆるりとする。懇意にしているスタジオは、まったりとしたサークルのような雰囲気があり、とても落ち着く。馴染む。こういう場所は、大事であり貴重である、本当。

 


再び車を駆動させ、いざ小倉FUSE

空は少し雨が降りそうだった。嫌だな。

 


会場に着き、荷物を搬入する。

搬入は、毎回本当にしんどいし面倒くさい。

しかし、やらねばならぬ。我々がやらねば誰がやる。マジで。

まぁ、さすがに十年もやれば、慣れるが。

 


搬入終わり、挨拶をし、一息をつく。

本日の共演者は、知り合いが多い。

出会いは少ないが、精神的に落ち着くし、やはり楽しいので、ありがたい。

 


準備をし、リハーサルを終える。

慣れ親しみすぎた小倉FUSEはもはや、やりやすいとかそういう話ではなく、ここが基調とされてバンドがデザインされているため、実家のような安心感がある。

そりゃあ、もうここで10年やってますから。

 


あぁ、10年経つのか、経ったなぁ。

 


リハ終わり、サポートDrみょーちんと外出、適当なパンを見繕って、コーヒーも揃える。

飯は食わねば力は出ないが、出番直近に食べ過ぎても声がでないので、当日の飯事情はシビアである。

流れ的に、リハ終わりは出番の3時間前というタイミングだったので、パン2個で妥協。

本当は、ラーメンが、食べたかった。

 


楽屋にもどる。

楽屋内は、ツアーをしてきたバンドが多いせいか、静かである。お疲れ様だぜ。

やんやん喋るのも好きだが、そういう気遣いが出来ない人間ではないので、沈黙の中、ひとりパンを頬張り、コーヒーで流す。

 


リハーサルをしているバンドの音漏れだけが、楽屋内を席巻する。

コーヒーのすすり音を、少しだけ混ぜる。

 

 

 

顔合わせを終え、まもなく開場、からの開演である。

財布の中身が薄くなっていることを思い出した私は、駅のATMまで、お金を卸しに行く。

減っていく残高を見ながら、奥歯を噛む。

「残高照会」をしてから卸すようになったのは、いつからだろうか。

当然の欲望として、お金、欲しいぜ。

 


しばらく街を徘徊しながら、mcなどを考える。

昔は綿密に言う事を考えていたが、最近は変わった。今思うこと、言いたい事を、流れだけ調節して出す形にしている。

その方が、良い。良いと言うか、単純に、今の私に馴染む。そのまま出せばいいのである。

 


開演する。

我々は3番手、出番は1時間後。

共演者をちょいちょい見ては、楽屋で準備を整える。レッドブルも、入れ始める。エナジードリンクの効き目は知らんが、まぁ気休めにはなる。

 


本番前は、やはり緊張する。

昔ほどではないが、精神がゆるやかに、乱回転しているのがわかる。

だがまぁ、それも、悪くない心地ですよ。

やって、やんぜ。

 

 

 

本番。

地元という事もあり、登場を歓声で迎えて頂いた。本当にありがたい。

前口上を述べ、音を鳴らす。

鳴らし、回し、唸らし、歌い、叫ぶ。

後半は、騒音の中で、半忘我状態で言葉を回していた。

とても、楽しい。

とても、たのしい。

 


演奏が終わり、ステージを降りる。

いいライブは、できたと思う。

息を整え、片付ける。

とても、たのしい。

 


気持ちを落ち着かせ、客席へ。

共演者をみたり、お客さんと話したり、色々と、する。

高揚状態なので、なんでも幸せである。

ライブっていいんだよなぁほんと。

 


公演が終わる。

物販もそれなりに終えて、片付ける。

 


片付けた後、なにもなくなった会場の、祭りのあと、感覚は、なんともいえない寂寞があり、好きである。

 


サポートBa.お嬢は、この辺で帰宅する。

マイペースな小娘である。周りに流されたり、なし崩しにされない意思は、ある意味では羨ましい。

 


そのまま、バーカウンターにて、打ち上げが始まる。

飛び交う盃を、ウーロン茶で鳴らす。

 


同時に、順番に清算が始まる。まずは我々から。

 


事務所にて、今日のライブを見た店の人に、結構なダメ出しを喰らう。

いいライブをした自信はあっただけに、少しだけ落ちる。

ただ、その人はもう10年、我々を見てくれているのである。それに、最近の我々は褒められる事が多く、言ってくれる人の存在は、ありがたい。ありがたく、頂戴する。

 


「ギラギラがなくなった」と言われた。

そうかもしれぬ。

10年前は、あらゆるモノを、ぶち殺すつもりで、戦うつもりで音を鳴らしていた。

だが10年経って思うのは、我々は戦っていたつもりだが、相手にとってはそうではなかった。勝ち負け以前に、相手にとっては「そもそも君、誰?」と言われてもおかしくないものであった。我々は10年間、平和の中で銃の整備を進めていたのだ、そんな気がしている。


それに気づいてしまった以上、考えてみれば、ギラギラは減っていったやもしれぬ。


しかし私は、私が思う想いは、昔以上のモノがある。その自信はある。

見つめ直して、みようと思った。

 

 

 

打ち上げでは、友人に、今日のライブの好評価をもらい、少しだけ救われる。前進をしていなかった訳ではない、それがわかって、とても嬉しい。

 


バーカウンターでの打ち上げを終え、後に小倉名物「資さんうどん」を食べに行き、解散する。資さんはいいぞ。本当にうまい。

 


解散後、知り合いのバーに呼ばれていたので、ノンフィクションで赴く。阿呆なやり取りをしたり、ギラギラの件を相談したりして、楽しく過ごす。私は金銭面とお酒が飲めない事で、こういう場所は来づらいのだが、久しぶりに会う人もいて、楽しかった。こういう機会はありがたい。

 


帰り際、サポートDrみょーちんを家に送り、ソウイチロウ宅に到着。

そのまま、車のエンジンを切り、ソウイチロウ君と長めの相談をする。

 


今日のダメ出しをメインに、今後のこと、今後のバンドのこと、今後の人生のことを、相談する。

 


我々も、もう30になる。

ここからの流れは、今後一生の人生になる。影響する、とかではない、これが人生になる可能性も十分にある。

 


明け方も近い時間帯、機材車の中に、二酸化炭素が溜まっていく。

夜明け前が一番暗い、と、考えてみれば当たり前の言葉を思い出す。

 


結局のところ、結論はいつも同じになる。

「続けよう」と、幾度となく同じ結論になる。

なんだかんだ、私もヤツも、今の生活が、楽しいのである。

不平不満や不便不都合、ストレスを挙げればキリがないが、それでも、日々を充足させて生きている、その実感はある。

お互い脳味噌が回らなくなった時点で、車を出る。背伸びをして、荷物を持ち、ソウイチロウ宅へ。整えて、眠る。

 

 

 

よく考えたら、「続けよう」という結論は、結論ではなく先延ばしなのかもしれぬ。

そんなことを思いながら、眠る。