朝、またもGtソウイチロウ宅にて、10時に目覚める。
睡眠、ガッツリ9時間頂きました、さすがに、元気である。
本日は、小倉FUSEにて、ライブである。
しばらくは、携帯をいじるなどして、適当に目を覚ます。
少しして、ソウイチロウ君も起床する。適当に挨拶を交わす。談笑したり、今日の予定を確認したりしながら、パンを焼き、パンを食べる。「寝起きの11時に食べるパンは朝食か昼食か」と考えながらシャワーを浴び、準備を整える。
少しして、家を出る。
車に荷物を詰め込み、エンジンをかけ、行く。
どんよりと曇るこくらの街を機材車が行く。
平日だってのに、街には車が多かった。
みんな忙しいのか、2月、少ないもんな。
「私がいかにして『異世界転生』ものが嫌いなのか」を論理的に説明しながら、サポートDrみょーちんを迎えに行く。3人で暴論と詭弁を酌み交わしながら、スタジオへ向かう。
ライブに向けての練習ができなかったので、確認のために、会場入り前にスタジオに入る。サポートBa.お嬢とも合流し、練習を開始する。
本日披露する30分の曲目と流れを、整頓し、詰める。組み合わせて、貼り付ける。30分の作品を作り上げる。
大事なのは流れ。空間芸術は、聴き手の意識の流れとの戦いである。急所を突いて、揺らさねばならぬ。
グッと合わせて1時間、練習を終える。
会場に入るまで少し時間はあるので、ゆるりとする。懇意にしているスタジオは、まったりとしたサークルのような雰囲気があり、とても落ち着く。馴染む。こういう場所は、大事であり貴重である、本当。
再び車を駆動させ、いざ小倉FUSE。
空は少し雨が降りそうだった。嫌だな。
会場に着き、荷物を搬入する。
搬入は、毎回本当にしんどいし面倒くさい。
しかし、やらねばならぬ。我々がやらねば誰がやる。マジで。
まぁ、さすがに十年もやれば、慣れるが。
搬入終わり、挨拶をし、一息をつく。
本日の共演者は、知り合いが多い。
出会いは少ないが、精神的に落ち着くし、やはり楽しいので、ありがたい。
準備をし、リハーサルを終える。
慣れ親しみすぎた小倉FUSEはもはや、やりやすいとかそういう話ではなく、ここが基調とされてバンドがデザインされているため、実家のような安心感がある。
そりゃあ、もうここで10年やってますから。
あぁ、10年経つのか、経ったなぁ。
リハ終わり、サポートDrみょーちんと外出、適当なパンを見繕って、コーヒーも揃える。
飯は食わねば力は出ないが、出番直近に食べ過ぎても声がでないので、当日の飯事情はシビアである。
流れ的に、リハ終わりは出番の3時間前というタイミングだったので、パン2個で妥協。
本当は、ラーメンが、食べたかった。
楽屋にもどる。
楽屋内は、ツアーをしてきたバンドが多いせいか、静かである。お疲れ様だぜ。
やんやん喋るのも好きだが、そういう気遣いが出来ない人間ではないので、沈黙の中、ひとりパンを頬張り、コーヒーで流す。
リハーサルをしているバンドの音漏れだけが、楽屋内を席巻する。
コーヒーのすすり音を、少しだけ混ぜる。
顔合わせを終え、まもなく開場、からの開演である。
財布の中身が薄くなっていることを思い出した私は、駅のATMまで、お金を卸しに行く。
減っていく残高を見ながら、奥歯を噛む。
「残高照会」をしてから卸すようになったのは、いつからだろうか。
当然の欲望として、お金、欲しいぜ。
しばらく街を徘徊しながら、mcなどを考える。
昔は綿密に言う事を考えていたが、最近は変わった。今思うこと、言いたい事を、流れだけ調節して出す形にしている。
その方が、良い。良いと言うか、単純に、今の私に馴染む。そのまま出せばいいのである。
開演する。
我々は3番手、出番は1時間後。
共演者をちょいちょい見ては、楽屋で準備を整える。レッドブルも、入れ始める。エナジードリンクの効き目は知らんが、まぁ気休めにはなる。
本番前は、やはり緊張する。
昔ほどではないが、精神がゆるやかに、乱回転しているのがわかる。
だがまぁ、それも、悪くない心地ですよ。
やって、やんぜ。
本番。
地元という事もあり、登場を歓声で迎えて頂いた。本当にありがたい。
前口上を述べ、音を鳴らす。
鳴らし、回し、唸らし、歌い、叫ぶ。
後半は、騒音の中で、半忘我状態で言葉を回していた。
とても、楽しい。
とても、たのしい。
演奏が終わり、ステージを降りる。
いいライブは、できたと思う。
息を整え、片付ける。
とても、たのしい。
気持ちを落ち着かせ、客席へ。
共演者をみたり、お客さんと話したり、色々と、する。
高揚状態なので、なんでも幸せである。
ライブっていいんだよなぁほんと。
公演が終わる。
物販もそれなりに終えて、片付ける。
片付けた後、なにもなくなった会場の、祭りのあと、感覚は、なんともいえない寂寞があり、好きである。
サポートBa.お嬢は、この辺で帰宅する。
マイペースな小娘である。周りに流されたり、なし崩しにされない意思は、ある意味では羨ましい。
そのまま、バーカウンターにて、打ち上げが始まる。
飛び交う盃を、ウーロン茶で鳴らす。
同時に、順番に清算が始まる。まずは我々から。
事務所にて、今日のライブを見た店の人に、結構なダメ出しを喰らう。
いいライブをした自信はあっただけに、少しだけ落ちる。
ただ、その人はもう10年、我々を見てくれているのである。それに、最近の我々は褒められる事が多く、言ってくれる人の存在は、ありがたい。ありがたく、頂戴する。
「ギラギラがなくなった」と言われた。
そうかもしれぬ。
10年前は、あらゆるモノを、ぶち殺すつもりで、戦うつもりで音を鳴らしていた。
だが10年経って思うのは、我々は戦っていたつもりだが、相手にとってはそうではなかった。勝ち負け以前に、相手にとっては「そもそも君、誰?」と言われてもおかしくないものであった。我々は10年間、平和の中で銃の整備を進めていたのだ、そんな気がしている。
それに気づいてしまった以上、考えてみれば、ギラギラは減っていったやもしれぬ。
しかし私は、私が思う想いは、昔以上のモノがある。その自信はある。
見つめ直して、みようと思った。
打ち上げでは、友人に、今日のライブの好評価をもらい、少しだけ救われる。前進をしていなかった訳ではない、それがわかって、とても嬉しい。
バーカウンターでの打ち上げを終え、後に小倉名物「資さんうどん」を食べに行き、解散する。資さんはいいぞ。本当にうまい。
解散後、知り合いのバーに呼ばれていたので、ノンフィクションで赴く。阿呆なやり取りをしたり、ギラギラの件を相談したりして、楽しく過ごす。私は金銭面とお酒が飲めない事で、こういう場所は来づらいのだが、久しぶりに会う人もいて、楽しかった。こういう機会はありがたい。
帰り際、サポートDrみょーちんを家に送り、ソウイチロウ宅に到着。
そのまま、車のエンジンを切り、ソウイチロウ君と長めの相談をする。
今日のダメ出しをメインに、今後のこと、今後のバンドのこと、今後の人生のことを、相談する。
我々も、もう30になる。
ここからの流れは、今後一生の人生になる。影響する、とかではない、これが人生になる可能性も十分にある。
明け方も近い時間帯、機材車の中に、二酸化炭素が溜まっていく。
夜明け前が一番暗い、と、考えてみれば当たり前の言葉を思い出す。
結局のところ、結論はいつも同じになる。
「続けよう」と、幾度となく同じ結論になる。
なんだかんだ、私もヤツも、今の生活が、楽しいのである。
不平不満や不便不都合、ストレスを挙げればキリがないが、それでも、日々を充足させて生きている、その実感はある。
お互い脳味噌が回らなくなった時点で、車を出る。背伸びをして、荷物を持ち、ソウイチロウ宅へ。整えて、眠る。
よく考えたら、「続けよう」という結論は、結論ではなく先延ばしなのかもしれぬ。
そんなことを思いながら、眠る。