ヒズミ回想

とあるバンドマンの、変哲も平坦もない日常。

6月9日 そして猫が鳴いている

朝は10時に起床。

本日は四次元にて、ツアーファイナルである。

本日のライブから新曲をやる予定なので、昨夜はずっと歌詞を考えていた。結局は完成せずに、寝る時間だけ遅くなってしまった。

起きるも、まだ歌詞は完成していない。あと、4行くらいでは、あるのだが。

 

バナナを食べ、適当に目を覚ましたら、歌詞を考える。

「サイレントゴールド」という曲である。4月にMVを出した「ユーベンシルバー」と対になる曲である。沈黙は金、雄弁は、銀。

歌詞、歌詞ばかりは、妥協はしたくない。得てして歌詞については、一度決めてしまったら、変えるのはホント難しい。歌ってしまったら尚更である。もうその形で、一度生み出されてしまったので、それをなかった事には、あまり、できない。

考える、1行埋めては、頭を抱え、逃避して、考える。昼飯に、大量のパスタを重曹入りで茹で、中華麺にして、すする。また、考える。1行埋めて、考える。

なんとか、出来上がった。時間は14時を過ぎていた。15:30には四次元に着いておきたい。作業をするつもりだったが、無理そうである。

少しだけ眠って、15時頃、そろそろ出る時間である。そんなとき、ソウイチロウ君から、小倉組到着の連絡が入る。思ったより、早い。よし、ちょっと話して無茶を言い、到着後の諸作業を小倉組に任せ、私は少しだけ、作業をさせてもらう。

30分ほど、動画を並べてたら、家を出る。昨日来たばかりのフリーペーパー「ヒズミ会報」を持って、電車を使って、四次元に、行く。

四次元に、着く。ノンフィクション小倉組と、本日共演の、バミューダとアバウトも既にいた。途中でけんじろうも合流し、やんややんや言いながら、リハをやる。この、リハからやんややんや言い合うのが、良いなぁ。

本日の共演者は、私含めてほとんどが同い年、平成元年生まれである。今年30になる。皆、それなりに長い付き合いなので、リハから笑い合う事ができる。祭りの準備みたいで、とても、良い。まぁ、祭りなのだけれど。

 

皆リハを終え、顔合わせも終える。顔合わせと言っても、全員知り合いなので、必要なかったかもしれぬ。それでも、儀礼として、私は好きなので、やる。

終わったら、ちょいと私はアーリービリーバーズに顔を出しに行く。知り合いが、結構な量、出ているのだ。くそう、できればかぶりたく、なかったぜ。やぁやぁと、挨拶を、広める。

帰り際、コンビニで水とコーヒー、菓子パン、ゼリー飲料を買う。少しでも、良いライブにせねばならぬ、のだ。そのための出費は、惜しみたくない。本当は、惜しみたいけど。

クロワッサンをかじりながら歩く。MCを、考える。

 

四次元にて帰りつく。共演者たちはパラパラと、各自で遊んだりしている。サークルの定期ライブを思い出す。というかまぁ、奴等とは、そういう関係に近いかもしれん。サークル仲間。

 

して、ライブが始まる。

1番手、ひがしけんじろうである。こやつのライブを見るのは本当に久しぶりである。4年くらい前には、バンドでちょいちょい対バンをしていたが、しばらくは道が分かれていた。ボードゲーム会の方がよく会っている。

4年前と、曲調もなにも全然違っていたが、今の方が、ニュートラルに歌っている。とても良い。情感、よい。歌もそうだけど、1曲1曲できちんとMCを挟んで、ダレがちな弾き語りをテンポよくしているのが、良い。いいライブになっている。そういうとこ、流石なんだよなぁ。

さて、Bermuda△である。こやつらとも、付き合いが深い。一緒にツアー誘ってくれたり、主催に誘い合ったり、ありがたい友人である。

ライブは、いつも通り、良い。コミックバンドなのか、コミックバンドだよな?うん、私には基準はわからんが、そのままでいて欲しい。くれぐれも、アルバムの最後とかで、ふざけ一切なしの、気持ち込めた本気の曲とか作らないで欲しい、くれぐれも、くれぐれも。

きちんと、場を勢い付けてくれる。ありがたや。

そしてabout a ROOM、彼等とは浅からぬ仲である。一時期は、毎月のように対バンをしていた。同い年だし、結成も同時期だし、4人だし、リードギター動くし、結構シンパシーを、感じているぞ、私は。

昔は結構、おちゃらけた曲が多かったが、最近は熱い曲がほとんどである。きっとそれが、本来の性分なのだろう。バンドは長く続くと、その辺のモノも剥き出しになってくる。バミューダは知らん。

ギターロックなのだけれど、取り繕いはしない、かといって飾らない訳でもない、ほんとボーカルのリョージ君そのままみたいな曲が続く。その辺の綺麗なバンドには、この熱は、出せんぜ。この濃さは、出せん。

 

さて、我々である。同い年どもよ、ご苦労であった、ありがとう。

スタンバイが終わり、SEが鳴り、出て行く。

入った瞬間、物凄い歓声である。いやぁ、ありがたい。

ん、いや、これは、なんか、すごいな、っていうか、歓声というより、結構、野次じゃねぇか、怒号みたいになってる。しきりに私は、名前を呼ばれる。「イイジー」はいい、「タカヒロー」はやめろ。下で呼ばれるのは、慣れていない。

困惑しながら、しかしね、アガる。ゴザイマスして、轟音と共にライブを、始める。さぁ、ディストーションである。

 

ライブ、演奏しながら、結構ね、皆さんの顔、見えてます。ほんと。久しぶりに来てくれた人も、いつも来てくれる人も、色々、見えてます。

感謝は尽きない。今の私は、その全てのためにある、そのために、弾く、そのために、叫ぶ。

 

ぶっちゃけて言えばね、本日の企画、こちらの想像よりも、お客さんの入りの数は、良くなかった。

もっと宣伝すりゃよかったとか、もっと誘えばよかったとか、ツアーファイナルで赤字とか何をやっているんだとか、いつまでも数字が、実績がでない、また出せない事に、気が落ちてしまう。今年30だぞ、何を、して、いるんだ。

 

だからこそ、今目の前の存在が、ありがたくてしょうがない。入場のSEがなったら、全ての問題は、問題ではなくなる。弾いて、歌って、合わせる、だけだ。弦が震ているのではない。人生を奮っているのだ。楽しい、楽しい。ああなんて、楽しい。

楽しいままに、終了。

アンコールも頂き、9月の演劇、秋の新音源とツアー、ファイナルのワンマンまで、発表する。これほんと、宜しくお願いします。

新曲「サイレントゴールド」を、やる。まぁ、歌詞は、間違えるよね。できて10時間も経っていないのだ。不完全なもので申し訳ないが、どうしても今日、やりたかった。これからの、我々の、曲である。

「徘徊デッドリビング」までやって、終了する。ありがとうございました。ありがとう、ございました。ありがとう、ござい、ました。

 

物販を終えて、打ち上げとする。

少し話したら、清算を始める。三者三様、色々話したが、根底にあるのは、継戦の意思である。みな、まだまだ、戦うつもりである。

そう、戦わなきゃ、ダメなんだよ。勝って、得なければ、得ようとしなければ、ダメなんだよ。負けたら、失わなければ、ダメなんだよ。それが戦うということだよ。

近い位置に、しかも同い年に、そういう存在が居るだけで、私は本当に嬉しくなる。まだまだ、戦って、行こう。敗北はあるだろうが、我々に敗戦は、ない。そう信じている。

 

清算をしながら、ライブ中は消えていた問題が、浮かび上がってくる。

本日の赤字は、物販の売り上げを入れても、2万を越える。正直、痛すぎる出費である。ここまでが、あまり悪くない流れだっただけに、ここに来て、福岡で、ファイナルで、赤字は、痛い。バンドによっては解散モノだろう。

しかしまぁ、結果は結果である。敗戦がない以上、受け入れて、続けていくしかない。

死なんよ、我々は死なんがね、別に怪我が痛くないわけじゃ、ないのだよ。

 

打ち上げを終えて、同世代の奴等とも別れ、私は車で事務所まで送ってもらう。

部屋に戻り、荷物を置き、電気をつける。

寝床に転がり、ツイッターをさらうと、ブログを書き始める。ライブの異様な楽しさと、充足感。結果、数字が出なかった、金銭が減った敗北感、無能感が、六畳間に混ざらず回遊する。

外では、猫が鳴いている。子猫の、声だろう。彼らに手を貸しに行くべきか、今少し考えている。拾えないので、食べ物を買って置くくらいしか、できんだろうが。

まだ、猫は鳴いている。

 

 

補足

本日の我々のこの結果は、ただの我々の力不足であって、これを見ている人間には、一切の非はないです(私とソウイチロウ君以外)。

来なかった人を、非難しているように聞こえたら、申し訳ない。決して、そんな事はないです。ひとえに、我々の、責任です。