2020/9/3
夏のシ
夏がゆっくりと、埋葬されていく、そんな季節になった。
暑さも幾分収まって、破壊的だった空は和らいで、ツクツクホーシの声さえ減って、世間から少しずつ、夏が減ってきている。
シャベルか何かで、毎日一掻きずつ、夏に土がかかっていく。まだ顔も見えるけど、時が経てばすべて埋まって、じきに記憶へと置換されるだろう。
空を見上げるとそんなイメージが湧いた。視線を戻すと信号が青だったので、ペダルを漕いで買い物に向かう。買う予定のなかったアイスをひとつだけ買った。
店を出る。自転車の鍵を回して、家に戻る。ツクツクホーシはまだ鳴いている。