ヒズミ回想

とあるバンドマンの、変哲も平坦もない日常。

現想のあのころ

 

 

2020/11/12

 

現想のあのころ

 

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夜のピクニック」著者は恩田陸、再読しました。高校生たちが、ひたすら歩くだけの、青春小説であります。

これを初めて読んだのは、覚えてます、たしか中三、15歳でしたね。高校受験期間に発売されたので、死ぬほど読みたくても読めない時期を過ごした後の読破でした。

当時、登場人物の彼等は年上でした。なので、テンポの良い会話劇と伏線を楽しんで読んでおりました。「儚さ」みたいなモノはあまり感じられないながらも、良い雰囲気にちょっと涙しておりました。

今、31歳の私が読み直すと、本の中の彼等は遥か年下になっておりました。やはり雰囲気で少し涙しましたが、この涙は15歳の時のそれと、だいぶ成分が違っているように思えます。

儚さ、なんて言葉では表現し得ないほど儚さ。かつて我々もそうだったはずなのに、これを読むと思い出すのに、我々は本当にそうだったのか、未だに信じられない。私の学生時代、あれは現実だったのか。今の一分一秒と、当時の一分一秒が連続して繋がっているなんて。この歳になって、私はますます確信が持てずにいます。そういう意味で、あらゆる青春小説は、ファンタジーみたいなもんです。

しかしながら、恩田陸の描く高校生って、妙に生々しいリアリティを感じるのです。「高校生」っていう役職の人間を描いているのではなく、あくまで我々の、成人した人間たちの、若い頃の姿を描いているように思えます。人によっては高校生を「馬鹿」みたいに描くのですが、高校生というものは現実、「愚か」ではありますが「馬鹿」ではなかったりするのですよ。

そこにあったのは、現実でありファンタジー、ファンタジーであり現実、そして本の中の彼等も、30くらいになったら、私と同じような事を思っているのだと思います。

40くらいになって読み返したら、また別の感想が出たりするのでしょうか。