ヒズミ回想

とあるバンドマンの、変哲も平坦もない日常。

ドミノの途中仮説

 

 

 

 

2020/12/9

 

ドミノの途中仮説

 

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恩田陸「ドミノin上海」読了。

私の好きな群像劇です。三谷幸喜の映画みたいに、繋がりのない多くの人間が絡み合ってドタバタするのです。それぞれの人に目的があり、関係によっては目的がカチ合ったりしているので、単純な全員ハッピーエンドにはまず成り得ず、先が読めなくて面白いのです。全員が真剣なのにバカバカしい事になり、傍観者たる私はその度ケラケラ笑っております。

この本では窃盗団と警察と観光客と料理長と映画監督と陰陽師と風水師と宅配寿司とパンダ、などなど総勢25人と3匹が絡み合ったスクランブルなお話なのですが、その現状を把握しているのは作者と読み手たる我々だけで、登場人物の中に現状を完璧に理解している人間はいません。各々が、各々の考えで動いているだけです。

そんな風に、きっと我々の現実も、何処かで何かが絡み合っているのでしょう。我々は知らないだけで、実は裏で窃盗団が動いているかもしれません。警察が捜査をしているかもしれません。パンダがいるかもしれません。

そう考えると、何だか愉快な気持ちになります。私が今日、この本を読んで「面白かった」とツイッターした事も、ラーメンを食らい、帰りに川辺でコーヒーを飲んだことも、何処かで何かと関係しているのかもしれません。我々の現実には、25人と3匹どころではない、大量の人間が、それぞれの目的のために動いているのですから。