ヒズミ回想

とあるバンドマンの、変哲も平坦もない日常。

大歓声の行間で

 

 

 

 

2022/7/30

大歓声の行間で

窓の外の凄まじい明度を尻目に、クーラーの行き届いた部屋で、フジロック観ていました。

配信自体は、コロナ禍におけるそれなりに苦肉の策でしょうが、それでも無料で全国どこででもフジロックを観られるとは。凄い時代になったもんです。液晶の向こうで音を鳴らすのは、なんてったって世界最高峰の演奏たちですぜ。凄すぎる。インターネットはどこまでも俺たちの先を行く。

 

しかしフジロック、なんとなく「最高」って言っておかなきゃいけない気がしますよな。音楽やっていると特に。

そりゃあ、私かて嫌いではないですよ。好きなバンドもちょいちょい出てますし、映像見ては大口開けて「すげー」って言ってます。めちゃくちゃ凄い方々が、めちゃくちゃ良い音で、めちゃくちゃいい曲をやっている。これはもう、すげーもんです。

しかし、私が愛して焦がれるバンドは、ほとんど出演していないのが、少しだけ悲しいです。良い曲も、良い音も、凄さも、全然、私の求めているモノじゃないんですよな。

なんとなく、全体の雰囲気が緩やかになっているというか。全体的にゆったりした曲をメインに持ってきているような、そういうバンドがメイン層になっているような気がします。私の愛する、魂を燃焼させてその熱で吠えるような、そういうバンドはあまり選ばれてはいないようです。これも流行りなんですかね。

私の愛するモノがメインストリームになって欲しい気持ちと、いつまでもカウンターであって欲しい気持ちは、いついかなる時も相克していますが、フジロックのような、それこそ世界から音楽の最高峰が終結するような場に、私の愛するものがあまりないのは、どことなく寂しいものです。別に孤独で良いのはそうなんですが、ここまで無下にされるのも私は抵抗があります。めんどくせぇ性格ですな。

 

もちろん金も払わず無料の配信を観て、しかもちゃんと楽しんでおきながら文句を言うのは筋違いも甚だしい話です。しかしフジロックで世間が盛り上がれば盛り上がるほど、誰かがツイッターで最高とつぶやくたび、私の心はほんの少しだけ冷えていくのです。本当、めんどくせぇですよな。