ヒズミ回想

とあるバンドマンの、変哲も平坦もない日常。

11月4日 その男の日の この男の顛末

朝は11時30分に起床。

ずっと、Tシャツへアイロンをかけていた。乗せたインクを定着させるためのアイロンで、必要なのは1枚3分程度だが、40枚近いものへのアイロンは、単純に120分である。

1枚1枚、気が遠くなりながら、鉄板を駆動させていた。しかし、どうせならと、映画を見ながら作業を進めたので、そこまでの苦ではなかった。

映画は三谷幸喜の「マジックアワー」これ大好き。佐藤浩市、めっちゃ好き。

結局は5時30分まで作業をしていた。日付変更前後の精神錯乱モードで時間を取られてしまった。そこから、眠る。

 

そんな訳で、朝は11時半に起床。

起き抜けて、水を飲み、バナナを食べる。実家より貰ったパンも食べる。コーヒーも、飲む。

そして、まだ、作業は、あるのだ。

アイロンをかけたTシャツを、たたむ。40枚近くのモノをたたむのは、やはりそれなりに、かかる。そして「顔面名画ステッカー」シートを切る。適当な映像を見ながら、ちょきり、ちょきりとする。

時間である。荷物をまとめて、さぁ出ねば。しかし、荷物が、多すぎる。40枚近いTシャツと、新しいポスターとフライヤーとCDのライナーノーツと「ヒズミ会報」等の計700枚くらいの紙束。かさばる、非常に、かさばる。

詰めに詰めていくうちに、時間が過ぎる。遅れながら、何とか出発。最終的に、キャリー1、バッグ2、手提げ2、ポスター筒1という重装備で、街を目指す。

 

駅から電車で街に着く。

重装備を引き摺り、四次元を目指す。集合時間には既に遅れているので、急ぐ。

到着。荷物を2回に分けて運び込んだら、仲間たちと合流する。本日の主役であるソウイチロウ君は、やはりというか、若干緊張しているように見える。

宜しく、お願い、します。

 

リハーサルを進める。

本日のライブは、まずソウイチロウ君のピアノ演奏から、ソウイチロウ君ギターボーカルのSo NoN-FiCTioNを経て、正規ノンフィクションという、変則ワンマンライブである。

「リハ押しちゃて、次のバンドさんすみません」なんてギャグで失笑を買いつつ、リハーサルを進める。

ピアノ演奏時の照明にこだわったり、開演前のアナウンスの打ち合わせをしたり、する。

しかしこの男は、ピアノが、弾ける。

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リハーサルを終えたら、コンビニへ。夕食を買う。近場のラーメン屋に惹かれたが、グッと堪えておにぎりを3つ、胃に入れる。その後は100円ショップにて、グッズ用の安全ピンを買いに行く。

そこからは、バタバタ、準備。本日販売開始の物販が6個ぐらいあるので、バタバタ、整える。「バタバタ走るよバタ子さん」という歌を思い出す。バタバタ走るからバタ子さんか、どう考えてもバターだろうに。

開場する。お客さんが入ってくるも、しかしまだ準備は終わっていない。あまりお客さんにバタ子さんを見せたくないので、隠れてこっそりバタバタする。物販マン、新しい値札よ。

 

そうこうしているうちに、開演。

私の、ピアノコンクールっぽいアナウンスで開演する。笑いが起きたので、良し。

そしてソウイチロウ君の演奏が始まる。そう、この男は、ピアノが、弾ける。

いやぁ、弾いていた。実に見事に、弾いていた。ノンフィクション楽曲のアレンジをメインに、流れるようにピアノを弾いていた。めちゃくちゃ、良い。実に、映える。映えすぎる。

数曲やって、出番を終える。やるじゃん、この男。

 

さて、次はSo NoN-FiCTioNである。私はリードギターを務める。出番前、なんだか、大学時代にやっていた、コピーバンドの披露のようで、無遠慮な緊張と無責任な楽しみが同梱して、心が沸き立つ。

歓声と共に、またも私のアナウンスで、始まる。ソウイチロウ君が歌い、私が飾る。声量のない声と、リズムの悪いギターが、本当にコピーバンドのようで、笑ってしまう。楽しい、とても、楽しい。

1曲目の後半で、普段できないリードギターの動きにマンションの上がった私は、左足が、つる。まずいまずい、演奏中だ。楽しみで痛みを誤魔化し、続行する。

そして弾きながら、改めて思う。やはり奴の作る曲は、良い。ちょっと悔しいくらいある。私も頑張らねば。

4曲やって、終了。楽しかった。お客さんの反応も良い。嬉しさと、安心。心地よい疲労感に包まれる。

 

そして、次はいよいよノンフィクションである。疲労感に包まれている場合ではない。こっからまた60分くらいあるのだ。おいおい、いけんのか私。足つってんだぞ、私。

それでも、始まる。SEが鳴って、入場する、さぁ、やらねば、ならんぞ。

 

口上を述べて、演奏を始める。

そして1曲目「ムジカク猩々」にて、残りの右足が、つる。ジーザスクライスト。左足のつりも、まだ機を伺い襲ってくる。これは良くない。

良くないが、今この場には、何も関係が、ない。骨が折れようが、歯が飛ぼうが、音は鳴らさねば、ならぬ。

演奏を続ける。正味、3曲ほどで、体力はだいぶ、尽きていた。それでも、私は、とても、楽しい。体力もないが動ける、足も痛いが動ける。きっと、楽しすぎて狂っているのだろう。

曲目を続ける。「現代、無」という曲で無念を歌うと、少しだけ、涙が出た。

「足りない日々さえ失われていく」

と歌った時、こみ上げたのではなく、感情に押し出されるように、涙が、出た。

 

そして演奏を終える。

ノンフィクションで13曲、So含めると17曲、ソウイチロウ君はピアノ含めて全21曲、演奏を、終える。

楽しかった、本当に、あらゆるものが、楽しかった。間違いなく、現状で今年一番楽しいライブだった、救われた。そう、間違いなく、私は、救われた。

 

来て頂いた皆様のおかげです。

本当に、ありがとうございます。

 

レコ発をどういう形にするか、色々な条件を含めて、現状で「我々のできる一番楽しい企画は何か」と考えた末のイベントでした。

一番、楽しい企画になったと思います。

ありがとう、ございました。

 

物販と清算を経て、片付けを始める。そういえば足が痛いのと、やはりイベント自体は赤字だったので、少しだけ現実に戻されるも、大挙する達成感と多幸感には到底及ばず、しばし、酔う。

片付けたら、四次元のスタッフの皆さんと、ドリンクを飲みながらのプチ打ち上げ。普段はならない、音楽的な話に満ち満ちていて、とても楽しい。

 

車に機材を積み込み、撤収をする。車の中では、本当に皆「今日は楽しかった」しか言っていなかった。ソウイチロウ君も緊張が解けて、リラックスをしている。よかった、よかった。

打ち上げに飯はなかったので、途中、車を止めてラーメンを食べに行く。内々で、改めて所感を語り合ったり、ラーメンについての談義をしたり、SCPについて語らったりする。

 

事務所まで送ってもらい、私は一足先に、帰宅。

部屋に入ると、昨日までの精神錯乱の残り香が随所に残っていて、苦笑する。

安心しろ、昨日までの私よ、明日はとても、いい日だ。

と言っても、昨日までの私には通じないのだろうな。部屋を片付けながら、そう思う。

 

少し片付けたら、眠る。