ヒズミ回想

とあるバンドマンの、変哲も平坦もない日常。

「綺麗だね」と彼女は言った。

夕闇と夜の間、街を歩いていると、手を繋いだ母娘とすれ違う。

小さな娘さんが「お空が青いね」と言った。

母親が「青いね」と返した。顔は見ていないが、とても優しい声だった。

続けて娘さんが「綺麗だね」と言った。

母親も「綺麗だね」と返した。

 

綺麗、とは、私は空を見上げてみた。

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あぁ、これは確かに、とても、綺麗である。

ずっと視界に入っていたはずなのに、何故気がつかなかったのか。

 

きっと、そうやっていくつも、綺麗なモノ、素晴らしいモノを見逃してきたのだろう。

素晴らしいモノは、いくら見ても、素晴らしい。娘さんに感謝しながら、私は帰路についた。