ヒズミ回想

とあるバンドマンの、変哲も平坦もない日常。

真・シンプル

昼過ぎ、何となくダラけている自分に嫌気がさし、何をするでもなく着替えて部屋を出る。

いくつか、後回しにしていた雑務をこなした後、何をするでもなく、自転車で川辺を走る。

 

空が馬鹿みたいに青かった。

気温も丁度良いので、良い感じのベンチに座る。息を吐き、目を瞑る。水の流れる音と、遠くで鳴る車の音と、敷き詰められた無音を聴きながら、大気圏と邂逅する。

しばらくは、何も考えない。「何も考えない事ができる」時点で、やはりそれなりに、快復はしている模様。よしよし。

 

近くを鳩がうろつき、地面を二、三つついた後、また飛び立つ。その様を、呆けたように見る。

鳥が、飛ぶの、凄いなぁ、なんて事を考える。短い予備動作で、羽音と共に、すぅと空中を遊泳する。彼らには、重力というしがらみが無いように見える。それどころか、彼らは飛んで食って子を生んで死ぬだけである。我々より余程シンプルにできている。ジョブスもビックリなシンプルさだ。

彼らのようにシンプルに生きるには、どうしたら良いのだろうか。我々は大きくなりすぎた。グッと足を踏みしめながら、また空を眺める。

 

 

いつまでも居れるが、いつまでも居る訳にはいかない。自転車のサドルにまたがり、大腿に力を入れて走り出す。空はまだ、馬鹿みたいに青い。

 

事務所に戻って、少し眠り、作業を始める。

荒れ絡まった煩雑な人生の、再開である。