ヒズミ回想

とあるバンドマンの、変哲も平坦もない日常。

窓枠の向こう

 

 

 

2021/1/28

 

窓枠の向こう

 

風が窓枠を揺らす音を聞いている。

室内の音は暖房の駆動音、それと繋がる室外機、たまに私が姿勢を変えた時の衣や床の軋み。その区切られた静寂の中で、残り十文字前後の歌詞を完成させるべく、私の脳内は言語が飛び交っている。とてもやかましい。

歌詞を作るのは本当に難しい。リズムを合わせて、音韻を合わせて、字数を合わせて、意味を合わせる。個人的には文字として全体で見た時のバランスも重要な事項である。難しい熟語を多用すれば重くなるし、簡単な語やカタカナ語を増やせば軽くなる。行間の推量はもちろん、同時に鳴る演奏の空気も踏まえねばならない。

すでに何十曲も作ってきたので、自分なりのやり方やパターンはもちろんあるけど、未だに正解はわからないし、新作に取り掛かるたびに「今までどうやって書いていたっけ?」てなる。好きなバンドを聞くたびに、自分では思い付かなかった表現に落胆することも日常である。

外は暴風、まだ窓枠は揺れている。残り十文字はまだ、出ない。