ヒズミ回想

とあるバンドマンの、変哲も平坦もない日常。

その無念を

2023/1/6

夜、新年を祝うために北天神にて次元を越え、四次元のバー営業に行っていました。友人たちとクッソどうでもいい話ばかりしていましたが、よく考えればクッソどうでもいい話がきちんとできる場って中々ないので、そういう意味では貴重です。楽しい時間でした。

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問題はその後、車を運転して家に帰る途中、嫌なモノを見てしまいました。道路の真ん中、車に轢かれて倒れている、それは白黒の猫でした。

その辺りは、私の普段通らない道です。恐らくそいつとは見た事も、会った事もないでしょう。しかしそれでも、私はとても悲しい気持ちになりました。それまで楽しかったのがウソのように、深い深い沈鬱になりました。楽しかったのは、決してウソじゃないんですが。

そいつは、どんな生涯だったのでしょうか。飼い猫ではないと思いますが、それでもこの辺りで、誰かに可愛がられていたかもしれません。誰か優しい人の家に入り浸っては、ご飯をもらっていたのかもしれません。人懐っこい性格で、道を行く猫好きの足に擦り寄り、丸っこい声を上げながら、思いきり撫でて貰っていたのかもしれません。もちろん、誰かの顰蹙を買ったり、恨まれていた可能性もありますが。

そういうことを想像すると、胸が苦しくなります。170センチちょっとの私の体積では、とても入りきれないほどの無念が、とめどなく溢れてきます。そいつの生涯はなんだったんだろうか。車に轢かれて死ぬなんてのは、不幸な事故です。あまり誰が悪いなんて話ではないです。仕方ないと言えば仕方ない。でも、そうならばそいつは仕方なく、この世を去ってしまいました。

私は何もしません。できません。引き返して拾って、何処ぞに埋めようかとも思いましたが、それが条例みたいなのにどうなのかもわかりませんし、単に私の気休めにしかならないのは明らかです。仕方のない事故です。仕方ない、仕方がないのです。

せめて、この無念を覚えておこうと思いました。別に、この出来事を曲にするなんて事はしません。この思いを歌詞にするなんて事もしません。それでも、私はこの無念を抱えたまま、また様々な曲を作っていきます。そうして作った曲が、誰かの心を動かせたなら、誰かが少しだけ、誰かに優しくなれたなら、あそこでそいつが死んでしまった意味は、少しだけ生まれるんじゃないでしょうか。

その無念を、私は覚えておきます。轢かれた猫も、不幸な事故にあってしまった人も、解散したバンドも、もう演奏されることのない曲も、全部は無理かもしれませんが、できる限り覚えておきます。そうして、また曲を作っていきます。

言っても自己満足です、やっても私が満足するだけの話です。それでいいんです。誰かのためなんか思いませんよ、私がそうしたいから、やるんです。