ヒズミ回想

とあるバンドマンの、変哲も平坦もない日常。

3月11日 安息の日

朝は8時に、広島某所、ノンフィクション号車内で目覚める。

私の視界は、車の天井。

そう、いわゆる車中泊である。

あまり寝れず、腰は痛く、寝覚めは悪く、煩雑で、粗悪な朝であった。

 


しかしまぁ、それでも、目覚める。

本日ライブもなくオフなので、粗悪な朝でも充分である。昨晩買った水で食道を洗い、安いパンを押し込む。

 


さて、本日はオフである。

現在地は広島である。

夜の24時までに、大阪に着けばいいという状況。

つまり、そう、予定が、何もないのである。

 


さぁー、本日は、オフであるぞ。

 


とりあえず、正真正銘のノープランであるので、策を練る時間も含め、皆で銭湯に赴く。

遠征の時の風呂は、正味、1番の楽しみと言っても過言ではないかもしれぬ。が、入った後は大体、全てが流されて「今日ライブよくね?」状態になるため、長湯は厳禁である。

 


しかし今日は、ライブもないため、存分につかる。くたびれた精神性を、じゃぶじゃぶと洗濯する。さらに、休憩スペースでだらける。

とても、気持ちがいいぞ、おら。

 

 

 

さて、やることは、決まった。

ここは広島、よし。ならば宮島だ。厳島神社に行くのだ。あの、鳥居が海の上に建っている、例の、アイツだ、あそこに行こう。

宮島、一度行ってみたかったし、このままノープランでダラダラ進んで「どうする?」って15分ごとに聞き合うようなのはゴメンだ。私は、楽しみたいぞ。

 


というわけで、大阪とは方向的には逆にはなるが、宮島へ向かう。

海沿いを車で飛ばし、船に乗る。

 


船、たまにしか乗らんが、いいよね、船。

洋上から、島を眺めるもよし。船頭が刻む白波を見るもよし。モーター音だけ聴きながら、風を感じるも、また、よし。

叙情性の塊だぜよ。こいつぁ。

 


宮島、着。

鹿がいるとは聞いていたが、早速のお出迎えであった、鹿、とても可愛い、とても素晴らしい。可愛いものが好きな私とBa.お嬢2人、きゃあきゃあ騒ぐ、微笑むDr.みょーちん、広島出身のため、宮島に来すぎて飽きて目が死んでるGtソウイチロウくん、4人で順路を通り、宮島の土を馴らす。

 


そして、件の鳥居に辿り着く。

海の上に、鳥居が、ある。

荘厳な空気が、ある。

 


歴史を何も知らないので、何故あそこに鳥居なのか、どういう因果があるのかはわからないが、それでもあれが、道楽で作られたものでないこと、尋常ならざる意思をもって作られたのは、見てわかる。

昔の人の、ディストーションを、感じる。

 

 

 

宮島をめぐる。

観光のコツは、金銭感覚を阿呆ほど緩めることである。我慢していては、真に楽しむことはできない。論理を張るな、比較をするな、欲望を検品するな。そのまま、出すのだ。

 

 

 

であるが、やはり私は締めねばならぬ。

料亭のお高いお飯の誘惑は捨て去り、比較的リーズナブルな食事を入れる。今回は、コッペパンにカキフライを挟んだものであった。それでも、精神を凌駕するうまさであったのだが。

 


そして、もうこれだけ、もうこれだけだから、と自分に言い訳をし、穴子の天ぷらを、食べる。昇天、するかと、思った。

 


並ぶ商店、鹿、海、人の群れ、鹿、鹿、鹿。

宮島、ここには必ず、いつかプライベートで来てやる。ここは、とても、よい。

 


島というのは、時間の流れが、通常とは違う気がする。居るだけで、心身が整えられる。そんな気がするのである。

 

 

 

結構に歩き、結構にくたびれ、お嬢も鹿に飽きてきたので、名残惜しいが、帰りの船に乗る。

私は、もうちょい、鹿と戯れたかった。

 


さらば宮島、また会おう。

 


船着場でお土産を物色したのち、大阪に向け出立する。

心地よい気怠さを乗せ、ノンフィクション号が行く。

 

 

 

さて、本日夜は大阪の、友人の宅に泊まらせて頂く手筈になっている。そこを目指して高速を刻んでいく。

しかし、大阪の交通事情が、本当にわからない。数多の高速と無限のバイパスにナビゲーションは塞がれ、てんやわんやしながら、走る。やたらに車の路駐も多いし、暗黙のローカルルールを感じる。運転は私ではないのだが、ぶっちゃけ、怖い。

 


それでも、のんびりと慎重を巧みに使い分け、なんとか目的地へと到着する。

 


ちなみにその間の、7時間くらいののんびり道中、Ba.お嬢は、全て寝ていた。サービスエリアでも下りず、全て、寝ていた。マジかこいつ。

 


目的地にて、友人と合流する。

軽口を交わしながら、家に向かわせてもらう。

 

 

 

着いてみると、友人およびそのご家族から、結構なおもてなしを受ける。

寝床から浴室から食事まで、初対面の我々に、至れり尽くせり、して頂ける。ありがたすぎて、こちらは恐縮しかできない。

 


こちらも、様々なものが足りないのは事実である。ありがたく、頂戴する。

 


寝床を、お借りする。

今朝はネカフェで6〜7時間、車内で7時間くらい眠っていたBa.お嬢は、まだ眠れるらしい。なんだこいつは。

昨日の車中泊とは打って変わって、暖かい布団にくるまる。安息はここにある。

 

明日、いいライブをすることが、恩返しになると信じて、意思を固める。

 


そのうちに、眠る。