朝は10時ほど、大阪、友人の宅で目覚める。
深くは眠れなかったが、眠りの環境は素晴らしく良かった。車のシートではない、布団がこんなに素晴らしいものだとは。
順々に起床し、順々にシャワーを頂く。ついにはご飯まで用意して頂き、舌鼓をうつ。あったけぇ、あったけぇよ。ありがてぇよ。
本日は大阪、南堀江knaveでのライブである。
入り時間は昼過ぎなので、しばらく、ゆるりとさせて頂く。
布団に横になっている時間、いろんなものが充填されていくのが、本当にわかる。
さて、
時間である。
布団をたたみ、礼を告げ、会場へと向かう。
会場に着く。
諸挨拶を交わし、準備を進める。
開演が近づく。
本日共演する大阪の対バンの方々は、キャリアも実力も、結構な方々である。その中で、我々は、トリ、一番最後という出番を頂いた。
ぶっちゃけ、嫌である。
プレッシャーが、半端ではない。
今回のイベントを組んでくれた方も、それを狙っているとのこと。もう。
興行が始まった。
バンドが進む、進むうちに、色んな人が「ノンフィクションが~」と言及してくれて、とても嬉しい。
少し気恥ずかしいが、とても嬉しい。
そして、我々の前、大阪、「それでも尚、未来に媚びる」というバンドの出番となった。
出番の間、Voのがーこ君も、Gtのオイケくんも、何度も何度も、我々について言葉を発してくれた。
私にはそれが、たまらなく嬉しかった。
正直、ここ2~3年、自信を失っていた。
「良いものをつくる」自信は、昔から変わらずあったが、どうにも結果に結びつかず、「評価をされる」「数字をだす」という自信を、根本から失っていた。
「どうせ」なんて思いが、罫線のように、人生に敷き詰められていた。
だが、そんな私を、彼等は何度も呼んでくれた、立ててくれた。
やってる曲のこと話せばいいのに、ライブの宣伝とかしたらいいのに。
何度も何度も、我々を、呼んでくれた。
私に指を指し、叫んでくれた。
なんて、奴らなんだ、こいつらは。
私は、バンド同士の馴れ合い、のようなモノが、嫌いとは言わないが、あまり好みもしなかった。
しかし、今日この瞬間だけは、心の底から、感謝の念が湧き上がった。少し目蓋から、溢れてしまった。
もう次が出番だから、楽屋で準備をしなければいけないのに、奴らのライブを、ほとんど、見てしまった。
血は滾っていた。
妙に心は冷静だった。
やろう。
やるしかない。応えるしかないんだ。
結果がでなくても、数字がでなくても、見てくれてる人はいるのだ、想ってくれる人がいるのだ、それに応えられなければ、ライブなぞやる意味がない。
正直、客観的に見て、奴らの地元大阪で、奴らの後に、奴らに勝てるライブができる事は、ほとんどないと思う。だからトリは嫌だった。
それでも、勝負は始まるのだ。
抜け、構えろ、負ければ死ぬぞ。
お前がやる事は勝つことではない、戦うことだ。
SEが鳴って、入場した。
30分間、いい演奏ができた自信はまるでない。
それでも、魂を掛けて、戦った。
それは間違いない。
そこに間違いは、ない。
ライブが終わった。
評判も上々であり、嬉しい。本当に、来てよかったと、思う。
打ち上げも終え、荷物を入れ込み、別れと再会を誓い、車に乗り込む。
いい日だった。いい日でよかった。
噛み締めながら、大阪を後にする。
染み入った思いの湿度を確かめて、ノンフィクションは、続いていく。
この思いを、忘れてはならない。
忘れられないとも思うが。