ヒズミ回想

とあるバンドマンの、変哲も平坦もない日常。

開戦の用意

 

 

 

 

2020/7/9

 

開戦の用意

 

雨が続いている。梅雨も面目躍如である。

しかし、この雨を抜ければ、たぶん夏が、すぐそこまで来ているだろう。

もう少しである。

 

夏はとても、好きである。夏に関する大体が好きである。

溢れんばかりの蝉の声も、溶かすような太陽も、茹だるような暑さも風流である。喉を鳴らす清涼飲料水も、噛み砕く氷菓子もひとしお。汗を冷やす扇風機も、よく効いたクーラーの匂いも、ふと香る蚊取り線香の匂いも、あらゆるモノが叙情する季節である。

だがしかし、蚊、蚊よ、貴様だけは、許さん。

姿形も、血を吸う性質も許せぬし、あの不快な羽音は何度発狂に追い込まれたかわからぬ。

そして何といっても、あの痒み。あのムズムズとヒリつくようなあの痒みが、私は一番許せない。先に挙げた、夏のすべての叙情物、あれらすべてが、痒み一発で台無しになる。

夏のベンチに座りながら、じっと蝉の声を聴く。体温に近くなった気温、溶けていくような感覚の中、自販機で買った適当な炭酸飲料を一口飲めば、喉が弾け、スッと身体が冷え、ひとつ息を吐く。

書いているだけで最高なのに、脚を一箇所、蚊に刺される、たったそれだけで、もう集中できなくなる。さっきまで感じていた夏の原風景は消失し、イライラと患部を掻きながら脳味噌は蚊への呪詛で埋め尽くされる。そういう、ものである。

すでに今日、食事中に脚を4箇所狙撃されている。そうか、これが貴様らの宣戦布告か、いいだろう、受けて立つ。

私の夏に清き叙情を。とにかく私は、奴等だけは、絶対に許さないと決めている。

 

なんか、足をアルコールで消毒すると、いいらしい、ね、やる。