ヒズミ回想

とあるバンドマンの、変哲も平坦もない日常。

終劇

 

 

 

 

2021/5/17

 

終劇

 

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今更ながら、終わらせてきました。

「シン・エヴァンゲリオン劇場版」を、観てきました。

 

エヴァンゲリオン、思えば奇怪なコンテンツです。ここまで長い年月、賞賛と罵倒を以て語り継がれてきたモノは他にそうそう思いつきません。私も、深くハマった訳ではないですが、十代前半から因縁のある作品です。

映画館に行くのも久しぶりでした。好きなんですが、中々タイミングがない。正確に言えば、タイミングを作る意力が足りない。行ってしまえば、厳格な静寂と、ゆったりとした椅子と、許される出すぎな音量と、こういうタイミングしか食べないポップコーン、どれも快適で、心地よいものです。予告編も結構好きですし、いよいよ映画が始まる、照明が消えた瞬間の、弓のように心が引き絞られる感覚は、たまらんもんです。

 

 

ところで、私アレ嫌いなんですよ。難解な作品に対してよく言われる「作者はそこまで考えてない」って言葉。もしくは「作者もわかってない」「適当に言ってるだけ」みたいな台詞。自分を想像力に長けていると勘違いしている阿呆どもの常套句。1人残らず鏖殺してやりたい。

考える人ってのは、作者の脳味噌なんて考えてないの。考えてるのは作者ではなく、自分の脳味噌。自分の頭の中に展開されたパズルを完成させようと右左脳から脳梁から全部使って頑張っているの。そしてそれが最高に苦しく、楽しいの。公式たる作者から答えが提示されればもちろん「答え合わせ」っていう名目で楽しめるけど、それがなくても楽しいの。

いや、私は別にエヴァンゲリオンという作品について、そこまで深い考察をしてきた訳じゃなく、むしろ難解すぎて逃げてきた人間なんです。だけどこういうタイプの作品が、考察を放棄どころか嘲笑してくるタイプの糞野郎共におもちゃにされるのが、私は我慢ならんのです。特に前作「Q」が浴びた大量の批判。1作目の発表当初から「全4部作」と言われているものの3作目に対して「意味がわからないから駄作」と吐いたその口。臭すぎて本当に嫌になる。

庵野監督、こういう意見を濁流のように浴びながら、それでも今作を仕上げたのは凄いと思います。別に作らなきゃいけない義務はないですし、全部投げ出しても罰される法律はないです。それでも今作で間違いなく、何十年に渡るカオスに決着を着けてくれました。私も存分に楽しむ事ができました。尊敬、そして感謝です。

 

映画が終わり、ゆっくりと席が明るくなるにつれ、すうっと心が緩む感覚も、久しぶりです。残してしまったポップコーンとぬるくなったコーラを処理したら、また日常。しかし今朝までとは違う、エヴァが終わった後の日常が始まるのです。これですべて終わり。気分は晴れやかで、やはり少しだけ、寂しい。