ヒズミ回想

とあるバンドマンの、変哲も平坦もない日常。

キツツキと俺

 

 

 

 

2022/2/15

キツツキと俺

先日、父が公園でキツツキを見たと言っていた。キツツキ、読んで字の如く木を突くアイツである。当然のように知っている。

当然のように知っているが、そういえばあまり見た記憶はない。キツツキ、なんとなく庶民的な感じがするのに、鳥を見て「おっ、キツツキだ」と思った記憶が一切ない。もちろん、鷹やコンドルやフラミンゴなんかもそんなに見た記憶はない。しかしそれらの鳥は初めから日常にはいない、ある種特別な鳥である。場所や環境では日常的に鷹の舞うそういう地域もあるのかもしれないが、少なくとも、私の日常では鳩やカラスの方がよく見る。

キツツキ。キツツキという存在は、名前や存在から、なんとなく鳩やカラス、スズメなんかの側の鳥な気がする。全国的にどこででも見る、そんな鳥な気がする。一歩譲ってもウグイスやカッコーのような季節柄の鳥だろう。それなのに私は見たことがほとんどない。父の話を聞きながら、とても不思議な感覚であった。

もう30年以上生きてるので、結構のことは知った気になっている。少なくとも生活圏内の環境は、混み合った知識でない限りはすべて知ってると言っても過言ではないと思う。しかしそんな私も、キツツキを見た事がそういえばない。もちろん生活圏内にキツツキがいないからだろうが、「自分の生活圏内にキツツキがいない」という事すら、私は知らなかった。

まだまだ、知らないことだらけである。もちろんすべてを知る事なんてどれだけ生きても不可能だが、これだけ生きてるとちょいちょい、「モノを知っている」事に関して調子に乗ることがある。比較的、人よりはモノを知ってる人間だという自負はあるが、絶対的な知識については、まだまだ足りなさすぎる。近所の川にいるまた別の鳥は「ササゴイ」と言うらしい。なんだその名前は。今まで聞いたことがない。何十年か歩いていた川の、見てきた鳥の名前さえ私は知らなかった。勉強が足りん、というか、好奇心と知識欲が私には足りなかった。まだまだ、精進をせねばならぬ。

キツツキを一目見ようと、何度かその公園を訪れるが、私はいまだに逢えていない。まだまだ、私の生活圏内にキツツキは入りそうにない。父の嘘や見間違いだったらどうしようかと、若干に不安になる。