ヒズミ回想

とあるバンドマンの、変哲も平坦もない日常。

一枚挟んだ夏

 

 

 

 

 

2022/8/9

一枚挟んだ夏

奉公先のお店の、窓を拭いておりました。

ちなみに昨日も拭いてまして、昨日は外側から、今日は内側からの窓拭きをしてました。昨日は暑かったですが、今日は内側からなので快適です。コンディショナーされたエアーを存分に浴びながら、新聞紙をちぎっては窓に叩き付けておりました。

内側、私のいる側は静かで少し暗かったのですが、窓の外は凄まじく輝いて、蝉がわんさか鳴いておりました。窓ガラス一枚で遮断された夏を眺めていると、なかなかに美しいもんです。ひとたび外に出てしまえば、暴力みたいな暑さに辟易してしまいますからね。一枚挟んで眺めるのが、本当は丁度いいのかもしれません。それにしたって今日は暑すぎでした。なんだこれ、みんな大丈夫なのか?

外は濃厚な青空と、馬鹿みたいにでかい入道雲。暑そうな通行人と、嵐のように鳴く蝉。内側では霧吹きの発射音と新聞紙を擦る音、あと鳴っているのはエアコンの駆動音くらい。そして拭くたび、徐々に透過を鮮やかにする窓ガラス。いいですね。とてもいいです。この瞬間の私の人生は、結構に充実していました。

窓拭きなんて雑用ですし、ガラスだってひと月も経てばまた元通りに汚れます。しかしそういうのはどうでもよくて、夏を側に置いて、何か一心に作業をするという時間は、とてもいいものです。人生の根幹にはとてもならないですが、枝葉を少し鮮やかにするくらいはあってもいいと思います。

意味とか、理由とか、もちろんそれも大事なんですが、そうじゃない事にも大事なものはめちゃくちゃあるのでね。むしろそうじゃない方が多いまである。

ひとつひとつ、きちんと気づいて、大事にしていかねばならんです。窓を拭きながら、そんな事を考えていました。