ヒズミ回想

とあるバンドマンの、変哲も平坦もない日常。

ひさびさの徘徊録

2023/2/14

天気が良かったので、昼頃から近所の徘徊をしていました。良い感じのパン屋に入り、トングをカチカチしながら物色していると「焼き立て上がりました」という声が次々に上がり、軒並み食べるハメになりました。全部肉乗せて焼いたみたいなパンでしたが、焼き立てなら仕方がないです。置いてあるパンがCDだとすれば、焼き立てはライブですからね。体感が違います。良い音圧でした。美味しかったです。

コーヒーを飲みながら、またぶらぶらと徘徊。足の向くまま気の向くまま、気がつけば見知らぬ住宅街に入り込んでいることもあります。もしこの辺りで事件があったら、監視カメラに映った私が重要参考人となるでしょう。怖い顔をした刑事達が、血眼になって私を探すのは面白い気もします。なんならそのまま犯人にされる可能性もありそうですが。

公園があったので、ベンチに座って残りのコーヒーを飲んでいました。曇りですが暗くはない空の下、何を見るでもなく、何を考えるでもなく、じいっとしていました。

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風景をずっと見ていました。本当に「見て」いました。考えてみれば、しっかりと「見る」ということをするのは、日常の中ではあまりない気がします。ただ鼻で呼吸をすることを「嗅ぐ」と言わないように、ただ網膜が像を結ぶことを「見る」とは言わないのではないのでしょうか。網膜に映ったものをきちんと脳に通し、思考のテーブルまで上げて初めて「見る」と言うのではないのでしょうか。

そうやって見てみると、どんな風景でもまぁ面白い。まぁ風景ってのはほとんど動かない。草や枝が揺れ、ハトが地をつつくくらいで、他のものは断固として不動です。地面も、柵も、木の幹も、一切は動かずにそこにあります。余程なことがなければ、明日も明後日もそこにあります。当たり前なんですがあまりにも動かないので、ずっと見ていると、そのことがなんだか面白くなってきました。

コーヒーを飲み終えて一息ついたら、そろそろと帰路につきました。明日も明後日もある道を踏んで、来月も再来月もあるであろう信号を渡りました。まぁ動かない、固められた世界の中を、またふらふらと歩いて行きます。それでもそうやって見えた足元は、以前よりも少しだけ、力強く踏みしめられる気がしました。