ヒズミ回想

とあるバンドマンの、変哲も平坦もない日常。

一人称の散文

2023/2/23

時は昼。昼食でも作るかと、準備をしてコンロのノブをひねると違和感。異様に軽い。そして火がつかぬ。何度回しても火がつかぬ。元々貰い物のカセットコンロではあったが、とうとう逝ってしまったか。

とりあえず対応、作ろうとしていたオムライスは諦め、卵をレンジにかけて適当に米と喰らう。魚肉ソーセージは熱を入れずとも食べられる。そして納豆はいつでも私の味方である。電気ケトルでお湯を沸かし、椀に入れて味噌を溶かす。結果、ガスを使わずともそれなりの献立で昼は終わる。運命よ、私の一人暮らし歴をあまり舐めない方がいいぞ。

食後、どうしたものかと、近所のリサイクルショップへと足を運ぶ。リサイクルショップは結構好きで、私は見つけたら結構な確率で入る。そして大抵は何も買わずに出ていくのである。

リサイクルショップにあるのは、そのほとんどが中古品、つまりは誰かが使っていたものだということである。その辺が工場から出てきた家具屋とは違う。何処かの誰かが、何処かの家で使っていたのだ。

大きなタンス、化粧台、姿見、テーブルや洗濯機、はたまた適当なおもちゃやぬいぐるみ、雑多に置かれたエレキギターは大抵がフォトジェニックである。これらの前の持ち主の事を想像する。前の家にあった時の事を想像する。もちろん、ここにあるということは使わなくなったという事ではあるが、全くの一度も使わなかったモノもあるだろう。誰がどんな思いで買って、どんな感情が染み込み、どんな言葉を吸ってきたのか。無秩序な店内は、放棄されたテキストで溢れている。

不思議な感情で店内を歩きながら、見つけたコンロは思いの外値段が高かったので断念。しばらくの間キッチンはマイクロ波が支配するであろう。少しだけ憂鬱になる。

外に出たら、何故だか空がとても青く感じた。コンビニに寄ってコーヒーと適当な甘味を買い、歩きながら咀嚼する。歩くだけ歩いて何も進展のない状況ではあるが、空が青ければそれくらいはなんて事はない。少し寒いが天候も穏やかで言う事はない。帰り道中、見つけた野良猫をカメラで撮っていると、小学生の群れが奇声を上げながら走り去って行った。平和そうで何よりである。

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