ヒズミ回想

とあるバンドマンの、変哲も平坦もない日常。

良すぎる曲

2024/1/22

忘れた頃に投函される税金の催促みたいに、寒波がぶり返してきました。寒いのも風情はあって嫌いではないのですが、暮らしにくくなるのはそれなりに不便です。凍てつく六畳の部屋に対抗すべく厚着して、お湯を左心室に流し込んでいました。

今日もまた新曲のデモを作っていたのですが、困った事になりました。曲が良すぎるのです。最高のエモーショナルを4人で打ち鳴らす瞬間を想像しては、鼓動のBPMが速くなってしまいます。こいつは良いですね。残念ながら、良いのです。

この「困った」というのも、何らギャグみたいな話でもなく、本当に少し困っているのです。次に制作予定のアルバムの、予定の曲順にこの曲を据えると、あまりにも良すぎるのです。場合にもよりますが、これはね、良くないこともあるのです。曲としては良くても、アルバムとしての調和が乱れたりするのです。困りましたよ、冗談ではなく、マジで。

大切なのはバランスです。ガムシャラに良くすれば良いという話ではありません。ラーメンに合うのは餃子や炒飯であり、ステーキや寿司ではないのです。買ったばかりのピカピカの家具も、古い部屋に並べると浮いてしまうものです。調和とバランス、そして連続、作品を作るってのはそういう事です。

「残るモノを作りたい」なんてスカしてるわけではないです。一過性に楽しんで貰う作品ももちろん良いのですが、この世に残るモノってそういうモノだと思っています。「良さ」ってのは毒みたいなもんで、度が過ぎるモノは初見の人を昏倒させるほど強いですが、繰り返すうちに早く耐性がついてしまいます。「良さ」よりも「ちょうど良さ」を目指したいと、常々思っています。

今日作り始めたこの曲、これをどうするか、それはこれからの話です。試してみたら案外行けるかもしれません。没になるかもしれません。内容を弄って形を整えるかもしれません。いずれにせよ、きちんと生まれた曲ですので、きちんと自分に相応しいフィールドで生きて欲しいもんです。その辺は未来の私に任せるとします。