ヒズミ回想

とあるバンドマンの、変哲も平坦もない日常。

折り合いの澱の檻

2024/2/17

部屋の寝床に寝転がり、本を読んでいました。

突き抜けるような青空を文字通り尻目にして、一貢一貢を食い入るように睨みつけていました。文字列と行間に没頭する時間は、人類共通の至福ですよな。心地の良い時間です。

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夕木春央「十戒」。少し前に読んだ「方舟」に続き、クローズドなミステリーを新しい驚きで届けてくれる逸品です。伏線回収もどんでん返しも飽きるほど浴びてきた私ですが、こいつはまた唸らせてくれました。とても面白かったです。おすすめ。

作者はそこそこ、新しい作家さんではあります。調べてみたら歳下でした。「作品というのは大人がつくるもの」という刷り込みの中で生きて来た私ですが、最近になって歳下が増えてきましたね。先日観た「ぼっち・ざ・ろっく」の監督も歳下でした。まぁ私からすれば30歳ですら4個下とかですから、世の中はそんなもんです。

売れている歳下の方々を見るたび、心に雨、とまでは言いませんが、ツバメが低く飛ぶのを見たような気持ちになります。音楽、バンド関連でほもう慣れたようなもんですが、他のジャンルだとフレッシュなもやもやを提供してくれます。別に本を書く気はないのですが。

端的に言えば嫉妬してるんですね、私は、まだ。もっと世間に認められたかった、その気持ちは未だに心の底、澱のように蠢いています。「世間」の中に私の居場所が欲しかった。わかりやすい結果が欲しかった。今でこそそれなりに折り合いはつけていますが、昔はもっとヤバかったですね。狂っていたと言っても過言ではありません。まぁ、当時の私からすれば、今の私の方が狂っているのでしょうが。

時が経てば経つほど、必然的に歳下の数は増えていきます。歳下もじきに成熟して、素晴らしい作品を作るようになります。素晴らしい作品に年齢は関係ないとは思いつつ、私の心の中の澱はいつまでも掬えないでいるのです。いや、掬おうと思えば掬えるのに、掬ってはならないという思い、それこそ昔の私が救われないという思いも、心の何処かにあるのです。